過去ログ - マインドスイーパー
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67:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:30:34.50 ID:CGXDMCHp0
汀は、男に向けてズルリと足を引きずった。
あたりに豪雨がとどろき渡る。
汀は、男の前に時間をかけて移動すると、その焦点の合わない瞳を見上げた。
そしてさびしそうに口を開く。

「あなたが探しているものは、もうどこにもないよ」

男は、いつの間にか笑っていなかった。
真正面を凝視している彼に、汀は続けた。

「元になんて戻れない。一度狂ったら、狂い尽くすしかないんだよ。この世は」

男が手を振り上げ、汀の頬を張った。
何度も。
何度も。
汀は殴られながら、悲しそうな顔で男を見上げ、そしてその手を、折れていない方の右手で掴んだ。

「でも、そんなのはさびしすぎるから」

男の目が見開かれる。

「私が、狂い尽くすことを、許してあげる」

血のスコールの中、汀は男を引き倒した。
そしてその上に馬乗りになり、まだパックリと開いている、自分の左腕の傷口を彼の口に向ける。
ポタポタと、汀の血が、男の口に入った。
男が悲鳴を上げて、滅茶苦茶に暴れる。
それを押さえつけ、汀は血を彼の口の中に絞り出した。
しばらくして、徐々にスコールが止んできた。
やがて雲が晴れ、空に青い色が見えてくる。
晴れた空の下、汀は力なく横に崩れ落ちた。
男は、どこにもいなかった。
彼女はボロボロの体で、ヘッドセットのスイッチを操作して、呟いた。

「治療完了……目を覚ますよ」


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