73:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:34:47.10 ID:CGXDMCHp0
「圭介……」
「ん?」
「あのね……あのね…………」
少し言いよどんでから、とろとろと彼女は言った。
「ずっと、考えてたの……」
「何を?」
「何も分からないで死ぬのと……何も分からないで生きるのって……どっちが正解なのかな……?」
「…………」
「結局何も分からないなら…………何も出来なかったのと、同じじゃないかな…………」
圭介は無言で車椅子を押した。
そして店員達に見送られながら、駐車場に向かう。
「……俺にはまだ、よく分からないけど」
彼はそう言って、車のドアを開けた。
「生きていた方が、多分その方が幸せなんだろうと思うよ」
「…………」
「たとえ何も分からなくても、その方が……」
寝息が聞こえた。
彼は、眠りに入っている汀を見下ろし、息をついた。
そして小さく呟く。
「幸せだと、思うよ」
その呟きは寂しく、かすかな風にまぎれて消えた。
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