78:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 21:50:50.17 ID:CGXDMCHp0
蝉の声が聞こえる中、汀は圭介に車椅子を押してもらいながら、木漏れ日の中を進んでいた。
夕暮れ近くの、気温が下がってきた頃、近くの公園まで散歩に出てきたのだった。
そこで、汀はふと、公園の木の下に目を留めた。
「圭介」
呼びかけられて、圭介が車椅子を止める。
「どうした?」
「あそこ」
右手で木の下を指差す。
そこには薄汚れた段ボール箱が置いてあり、夕立で濡れたのか、グショグショのタオルがしいてあった。
近づいて覗き込んで、圭介は顔をしかめた。
今にも死にそうなほど衰弱した、手の平ほどの大きさの白い子猫が横たわっていたのだ。
「圭介、猫だよ」
「ああ、猫だな」
興味がなさそうにそう言って、圭介は車椅子を道の方に戻そうとした。
「待って、待ってよ」
汀が声を上げる。
「何だ?」
「死んじゃうよ」
「それがどうした?」
「私の髪の毛と同じ色だよ」
「だから、それがどうした?」
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