13: ◆Neko./AmS6[sage saga]
2011/10/24(月) 21:46:19.87 ID:ucx2SsZ8o
俺が驚いて椅子から転げ落ちそうになったところ、
女――いや、あやせに手錠を引っ張られ、俺は辛うじて落ちずに踏みとどまった。
「あ、あ、あ、あ、あやせっ!? ど、どうして俺がここにいるのが分かった?」
「初めは本社に電話したんですが、なかなか教えてもらえなくて苦労しました」
最近の会社は、簡単に社員の連絡先を部外者に教えたりはしない。
個人情報の漏洩が何かと問題になる昨今じゃ仕方のないことなんだが、
あやせは唇を尖らせ言外にその悔しさを滲ませた。
「何とか粘ったら、お兄さんが札幌へ赴任したと教えてもらえて、
そのあと札幌営業所の方にお訊きしたら、今日はこちらに泊まっていると……」
サングラスを外し帽子を取ると、俺の見慣れた黒髪ロング――じゃなかった。
長い黒髪を無理やり帽子の中に押し込めていたせいか頭はボサボサで、
その上そこいらじゅうが跳ねまくっていた。
変装のためとはいえ、せっかくの綺麗な黒髪が台無しじゃねえか。
「営業所に何と言って訊き出したんだか、俺も怖いから訊かねえけど……
てか、何でおまえがここにいるんだよ」
「そんなこと、お兄さんには関係ないじゃないですか。
でも、お兄さんには明日になったら札幌の街を案内してもらいますから」
俺の質問には答えようともせず、一方的に要求を突きつけるあやせ。
「案内するったって、俺だって今日こっちへ着いたばかりじゃねぇか」
「学生のときに何度か来たことがありますよね。
北海道のことなら俺に任せろって、以前わたしにそうおっしゃってました」
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