79: ◆Neko./AmS6[sage saga]
2011/11/09(水) 01:31:02.02 ID:Kno1wkE2o
あやせの様子がどうも変だと思い始めたのは、なにも最近になってからの話じゃない。
始まりは俺がまだ大学四年だったときの桐乃の何気ない一言だった。
『なんだか、大学に入った途端にあやせって忙しくなったみたいでさぁ』
そのときは桐乃もそれほど深刻に気に留めている様子もなかったし、
俺に向かって言ったというよりも独り言に近かったから、俺も敢えて何も言わなかった。
だが俺は、いつしかあやせが桐乃と距離を置き始めていることに薄々気付いていた。
それでも高校を卒業する頃までは二人はよく一緒に買物に出掛けたり、
二人して俺をからかったりと仲良くやっていたからさほど深刻には考えていなかった。
親友とはいえ、俺だって学生のときに赤城と衝突することだってあったしな。
しかし俺が考えていたほど、事はそう単純でもなかった。
俺は就職先が決まってあやせと会う時間が増えた頃から、その思いは徐々に強くなった。
どういうことかといえば、あやせが桐乃の名を口にすることがなくなったことだ。
「高坂さん、ビール、少しぬるくなっちゃったから冷蔵庫から新しいの出しますね」
そのとき、俺はこの眼ではっきりと見たんだ。
冷蔵庫のドアポケットに缶ビールがぎっしりと並んでいる光景をな。
たしか先輩は、『誰か来たときのために一応は買ってあるんです』と言ってたはずだが、
これじゃ普段から飲んでますって言ってるようなもんじゃねぇか。
「先輩、俺はもしかして、見てはいけないもんを見てしまったんじゃ……」
「そう思うのなら見なかったことにしてください。
もしもこの冷蔵庫の中の秘密を営業所の人に言い触らしたりしたら、
わたしは高坂さんに襲われましたとか、あることないこと言っちゃいますから」
どちらがインパクトが強いかなんて考えてみてもしょうがない。
ヤってもないことをヤったと言われて俺は無実だと弁明しているうちに、
先輩のことだから示談が成立しましたなんて言って俺を一生奴隷にするかもしれん。
まあ、そうなったら諦めるしかねえけど。
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