82: ◆Neko./AmS6[sage saga]
2011/11/09(水) 01:32:53.69 ID:Kno1wkE2o
「優しすぎるんです。……でもそれは勘違い、本当の優しさなんかじゃない。
友だちのことを想ってそうしたことでも、一番傷つくのはその友だち自身なんです」
「……桐乃が一番傷ついたって先輩は言うんですか?」
「ええ、高坂さんの妹さんが一番傷ついたと思いますよ。
だってそうじゃないですか、妹は兄のことが好きでも言い出せないんです。
たとえ口に出せても、兄は妹の気持ちを受け止めてあげることしか出来ないんです。
妹が兄のことをどんなに好きだといっても……無理なんですよ」
先輩は感情の昂りを抑えようともせず一気に言葉を吐き出したかと思うと、
おどけたような顔を俺に見せて淋しそうに笑った。
「ねぇ高坂さん、黒猫さんは今どうしてるんですか?
今でもメールとかしたり、札幌へ来る前は時々どこかで会ったりしてたんですか?」
先輩に訊かれて、俺はゆっくりと首を横に振った。
黒猫は松戸の高校へ転校してからも桐乃や沙織との交流は続けていたが、
俺と顔を合わせることは意識的に避けていたのか、俺も自分から連絡するのはためらった。
桐乃からときおり黒猫の近況を聞くことはあっても、それで俺がどうするということもなかった。
いつしか俺の心の中からも、黒猫は出て行っちまったんだ。
「……妹から、黒猫は都内の美大に進学したってことは聞きました。
その方面の才能は以前からあったみたいだし、あいつには合ってると思いますけど」
「何だか、あまり関心がなさそうですね。
結局は高坂さんが振られたようなものだから、それも仕方がないのかな」
すっかりと冷静さを取り戻した先輩だった。
先輩が言うように、今はもう黒猫に対して俺の気持ちが薄れつつあるのは否定できない。
あのとき桐乃が自分の気持ちを押し殺してまで、俺を黒猫の元に戻そうとしてくれたのに。
それにしても、先輩はなぜ会ったこともない桐乃が一番傷ついたなんて言ったのか。
素直にその疑問をぶつけると、先輩は口元に笑みを浮かべて俺に言った。
「わたしも妹だから」
(つづく)
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