過去ログ - 妹「ボクも連れて行って!」
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3:nyan[saga]
2011/11/06(日) 23:49:10.01 ID:j596Ywtl0
それは雪が降る日。
雪は降り積もり、世界は純白に変わる。
白い世界。
美しさに喜び、はしゃいだあの頃はどこにいったのだろう。
分からない。
何もかもが遠い記憶の果てで、思い出す事すら叶わない。

「あにぃ」

白い世界で、彼女は愛しい人の呼び名を呼んでみる。
優しく微笑む兄。
普段と変わらぬ優しい微笑。温かく自分を包む。
だけど、今日は……。


彼は兄で、彼女は妹だった。
幼い頃はよく共に遊んでいた。
毎日くたくたになるまで走り、泥だらけで帰宅した。
女の子らしくしなさい、と母に叱られるのが日課だった。
それでも、妹は兄といつまでも走っていたかった。それが願いだった。

ねえ、神様、ボクはどうして女の子に生まれたんだろう?

いつ頃からだったか、妹はそう思うようになっていた。
それは多分、自分が中性のような存在から、女の子に変わってしまったあの頃。
突然に襲った腹痛。
少しずつ変わっていく自らの身体。
生理。そして、性徴。
妹はそれを受け入れることが出来なかった。

どうして、いつまでも子供のままでいられないのだろう?
何故、このように悩むように生きなければならないのか。
自分でも分からない。
増して兄妹でさえなければ、別の形で兄と共に居られたかもしれないのだ。
それが妹の胸を痛める。

ねえ、神様は人間を真っ直ぐに創ったはずなのに、どうしてボク達は複雑に生きているんだろう?
迷い続けて、どうして生きていくんだろう?

自分は女として生きていくべきなのだろうか。
兄と共にあれないまま、ただの妹として。
それすらも分からない。
兄は自分の悩みをよく聞いてくれた。
太陽のような微笑で、彼さえいれば他に何もいらなかった、きっと。
辛くて泣き出してしまいそうな日には抱き締めて、慰めてくれた。
ずっと、このような日々が続いていくと信じたかった。

けれど、愛されたいと願ってしまったから。
いつまでも続く日々ではないことを、心の底で分かってしまっていたから。
だけど、それでも、今日は……。


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