過去ログ - 女教師「折角のクリスマス・イヴだし、付き合ってあげる」
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50:nu[saga]
2011/11/17(木) 19:07:05.06 ID:sq+AP/cA0
それから先生は夜空を仰いだ。
僕も先生の視線を追う。
先生の視線の先に何があるのかは分からない。
先生も別に何かを見ているわけじゃないだろう。
でも、僕は先生の視線の先にある何かを見たかった。
同じ物を見たかった。

不意にまた、先生が口を開いて囁くように言った。

「正味な話、私も自分が本気で死のうとしてたのかどうか分からないわよ。
イヴに家で独りで、旦那も子供も居なくて、何か色んな事が厭になっちゃった。
ちょっとテレビを観てみたら、幸せそうな人の群れが映ってるしさ。
世界の全部が私を追い込んで、孤独感で殺そうとしてるみたいに思えたわ。
だから、つい衝動的に包丁を握って、外に飛び出してた。
誰でもいいから、私を救ってほしかった。

いえ、殺してほしかった……のかもね。
自殺じゃ保険金も出難いでしょ?
子供には好かれてないし、正直、私自身も子供の事が好きじゃないけど……。
でも、私はあの子達の母親だから。
お金くらいは残してあげなきゃいけないとも思ってたのよね。
それは別に真に子供達のためじゃないけどね。
単純に無責任に自殺した私を後であの子達に責められたくなかっただけよ。
……冷静になって考えると、支離滅裂で馬鹿馬鹿しくなってくるわね」

言って、先生が笑う。
その笑いはもう自嘲でも苦笑でもなかった。
単に滑稽だった自分の姿を懐かしく思ってるだけみたいだった。

釣られて、僕も笑った。
先生の姿に未来の僕の姿を見た気がしたからだ。
将来的に僕は幸せになる事は出来るかもしれない。
誰かと心を通わせ、孤独でなくなる事も一度か二度はあるだろう。
傷の舐め合いみたいな形でしかないにしても、恐らく数回はあるはずだ。
そして、その幸福は多分簡単に崩れ去る。
幸福は永遠どころか多分二年も持続しない。
僕は何度だって幸福を失い、絶望し、死にたくなるんだろう。
死ぬまで、それを繰り返し続けるんだろう。
クリスマスの度にそういう事を考え続けるはずだ。
勿論、それは僕等に限った話じゃないけれども。


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