22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(埼玉県)[sage saga]
2011/11/22(火) 00:35:29.45 ID:7lsedLWlo
数十分後、私はギー助と一緒に外へ出た。
ギー助は卒業前に新しく手に入れたガットギターで、最近はギー太よりもよく弾いてるかもしれない。
なんだかんだで付き合いが長いギー太と違ってまだ分からないところもあって、
ギー太が小学校で友達つくって連れてきたらこんな感じなのかなって、お母さんみたいなことも考えたりする。
……ううん、大丈夫だよ。浮気じゃないってば、もう。
目指す先は、夜明け前の小さな公園。
高い木々に囲まれて、真ん中には広い野球場。
水の止まった噴水はステージのよう。囲むように観客席みたいなベンチがちらほら。
砂場の向こう側、木々に少し隠れたところに私は立った。
防火倉庫の近く、自販機に続く小道。
ここからだとあの広い野球場も見えない。ベンチもちょうど木に隠れて見えない。
公園を通り道にする人には、ぱっと見たら気づかない。実際、今もあの子に気づかれてない。
ここで私はあの子が通りかかるまで、弾き語りを始めた。
聴こえそうで聴こえない位置で、彼女に触れられない私はギターを鳴らす。
爪の先から冷気がしみこむ気がするけど、すぐ私の熱に溶けてしまう。
目をつぶって野球場のネットやスタンド、高い時計や木々なんかを視界から消して、頭の中の天使を見る。
そうやって誰にも聴こえないような時間、聴こえてもいいけれど、歌声をこっそり響かせた。
私の姿なんて見えなくてもいい。あの子の足音が、私にとっての歓声なんだ。
あの子が今日も生きてて、未来があって、光を発していてくれたら、それでいい。
“あの子の命を、存在を祝福するような、見守るような歌を作って歌おう”
神様ごっこをしよう。
一晩中働いて帰ってこれたあの子を、毎日そばで祝福しよう。
そう決めたら、するっと曲ができて、このステージにも立ててしまった。
ちいさな光を、やっと見つけた。
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