44:にゃんこ[saga]
2011/12/03(土) 20:54:42.64 ID:i/+JyzFt0
「いらっしゃーい!」
独特なイントネーションの柔らかい声に出迎えられる。
少し意外だった。
広島風お好み焼き屋さんの人は恐そうなお兄さんだろうと、ワタシが勝手に想像していたからだ。
でも、出迎えの声は優しく、柔らかくて、
その声の持ち主はとても穏やかそうな女の人だった。
広島弁を使う事だけが、ワタシの想像していたお好み焼き屋さんと一致していた。
その人は麻生さんと一緒に入って来たワタシの姿を見つけると、優しく微笑んだ。
「迷子の子、見つかったんじゃねえ。よかったねえ。
さ、今からお好み焼き焼いちゃるけえ、奥の席に座りんさい」
ワタシは一礼した後で、その人をじっと見つめてみる。
柔らかそうな癖毛をした二十代くらいの女の人。
このお店の店主さんなんだろうか。
何だかしっかりしていそうで、頼り甲斐のありそうな人に思える。
ワタシの想像とは違ったが、お好み焼き屋さんに相応しい人材に見えた。
店主さん(?)に言われるまま、ワタシは奥の席に足を進める。
外からは小さそうなお店に見えたけれど、
意外に奥行きがあるらしく、奥の区画では美術部の先輩達が勢揃いしていた。
先輩達はワタシに視線を向けると、
「おかえりなさい」と優しく微笑んで出迎えてくれた。
心配掛けて、ごめんなさい。
そんな思いを込めて、ワタシは先輩達一人一人に視線を合わせ、頭を下げる。
と。
一瞬、驚いた。
何故ならさっきまでワタシ達と一緒に居たはずのヒムロ先輩が、
何時の間にかタナベ先輩の隣に座って広島風お好み焼きを食べていたからだ。
一体、何時の間に移動していたのだろう。
……ワープ?
でも、そんなには驚かなかった。
ヒムロ先輩の事だ。
ワタシには想像も出来ない方法を駆使したのだろう。
例えばワープ……とかか?
駄目だ……。ワープしか思いつかない……。
まあ、いいか、ワープで。
ワタシは先輩達全員に頭を下げた後、
誰も座っていない一画に座り、背負っていたリュックサックを下ろした。
ワタシに続いて麻生さん、鳥飼さん、ケイトがその一角に座る。
その後から春日野先生、沢渡さん達が奥の区画に顔を出した。
何故だか堂郷先生は続いて来なかった。
店主さん(?)と話でもしているのだろうか。
「堂郷先生はどうしたとですかー?」
ワタシの疑問を麻生さんが代弁してくれた。
麻生さんもワタシと同じ疑問を持っていたらしい。
それには春日野先生が笑って応じた。
「堂郷先生は店主さんのお手伝いよ。
食べ始めてるのも居るみたいだけど、まだ結構な人数が居るじゃない?
それで少しだけ店主さんのお手伝いをするみたい。
心配しなくても大丈夫よ。
堂郷先生、お好み焼き作るの上手らしいわよー。
そうよね、沢渡さん?」
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