過去ログ - 黒子「……好きにすれば、いいですの」
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30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga]
2011/11/26(土) 01:52:44.58 ID:Cp32iA0do
「……」

 常盤台中学、寮。

 出かけた時には持っていなかった手提げ袋を右手に、白井が自分の部屋のドアを開けた。

 美琴の姿はない。

 普段であれば門限の時刻は過ぎているが、休日はそれもやや緩くなる。美琴が帰ってくるのは、一時間後、と言うところだろうか。

「……」

 白井は、室内に美琴がいないことに、安堵の吐息を漏らした。

 いまもし、自分が敬愛する彼女の顔を見たら――――もしかしたら、泣いてしまったかもしれないからだ。

 右手の荷物。

 薬で狂わされ、快楽に屈し、気を失い、目が覚めた後。

 結局、それ以上は何もしなかった彼から手渡された、一式の器具が、納められてる。

「……」

 彼は、次に呼び出す日はいつがいいか、と問うてきた。

「貴方の好きにすればいい」と伝えたら、「怪しまれないほうがいいだろ?」などと、言ってきた。

 休日を彼のために空けるのは屈辱だ。しかし美琴に感づかれるわけにはいかない。

 結局、週に一回はある非番の日の、さらにそのひとつ向こう。二週間後の非番日を伝えることとなった。

 毎週じゃ男が出来たと思われるだろう、とは彼の弁だ。

 その主張は正しいと思うし、そう言った気遣いをしたことに、陵辱に恨みを置いておけば、感謝すべきことなのかもしれなかった。

 そう。

 帰り際に手提げ袋に詰まった、肛姦の準備をするための道具を手渡されなければ、だが。

「……」

 震える身体をそのままに、己のベッドに腰掛け、手提げ袋を開けた。

 カテーテル。

 注入する液体容積を量ることのできる、ビニール袋。

 カテーテルを肛門に挿入するため際に使う、また、洗浄の後にソコをいじる時に塗りこむ、媚薬入りのローション。

 快楽を導くための、アナルビーズ細身のアナルバイブ。

 何よりも屈辱なのは、それらをどう使えばよいのかと言う、彼手製の説明書だ。

 別れ際。

 この一式を渡してきた時の彼の声がよみがえる。

 彼は今日、奪わなかった。

 唇は、彼の唇で蹂躙された。

 身体は、彼の指と舌で汚された。

 しかし、もっとも奪われたくないものは、奪われなかった。

「……」

 それはただの気まぐれか、それとも、いまのこの葛藤を見越してのことか。

 ポケットから、携帯電話を取り出す。

 待ち受けには、メールが一件。

 美琴からのもの。内容は『門限ギリギリになる』旨の一文。

 約一時間後だ。


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