過去ログ - 勇者「ハーレム言うなって」魔法使い「2だよっ!」
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888: ◆3VOBH3KJAk[saga]
2012/02/20(月) 15:40:26.24 ID:T3y4b9Dc0
「お父様!」

姫が、末王子の腕から離れ、隣国の王の元に駆け寄っていく。

それを微笑みながら見守った後、エントランス内の人間に向かって、

「背水の陣、とはお前らの事さ」

末王子は、扉の外の城前広場を顎で指した。

それを見て、エントランス内の誰もがまたもや絶句する。

国民が、隣国の兵が、近隣の村の農民が、大勢の人間がそこにいた。

手には剣や槍、鍬に鎌、果ては石礫を両手に抱えている者もいた。

そこに居る誰もが、闘志をその身の内で焦がしている。

それは、このエントランス内の愚かな人間達の退路が、もうどこにもない事を示していた。

「おう。間に合ったか。学生」

その声に、学生は彼の前に進み跪いた。

「王子。今までの失礼をお許し下さい」

「あぁ、やめてくれ。王子って事を隠していて悪かったが、話は今までのようにしてくれ」

「なりません」

学生はそう言うと、顔を上げ、末王子に話す。

「隣国の王や重役の方々には、私がデータを元に論じ、ご足労を頂きました」

「ご苦労。国民の皆は?」

「貴方様の名を出せば、誰もが一つ返事で立ち上がってくれました」

そうか。と満足気に喉を軽く鳴らし、広場にいる人間達に頭を下げた後、末王子は怪僧に語る。

「政治が下手な奴というのは、我が身や、高貴なる者が国であると勘違いし」

その言葉は怪僧には届かない。

怪僧の頭中が、全ての思考を放棄していた。

「何もかも、気に喰わない物を徹底的に壊そうとする」

姫は、その言葉に先程までの自分を重ね、怯え、父の体を強く抱きしめた。

末王子は続ける。

「だが、真の王は。政治にとって一番大事なのは、民だと、人であると理解している」

怪僧は、力なく膝を折り、頭を垂れた。

末王子は言った。

「王に君臨するのならば、必要なのは、腕の強さや権力の強さではなく」

「“何かと何かを繋ぐ事”なのだ」

広場の人間達は、遠くから見れば、一つの蠢く、醜い生き物に見えた。

しかし、間近でみれば、その誰もが呼吸をし、考え、そこに一人一人、存在していた。

高い場所から見下していた怪僧は、それを知り得なかった。

末王子は、近い場所で彼らを見ていた。故に知り得た。

憂国は、彼の手によって、怪僧と共に散った。



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