64: ◆hZ/DqVYZ7nkr[sage]
2011/12/01(木) 05:54:12.95 ID:/QGrE+6vo
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満天の星空を眺めながら垣根は黄昏ていた。
断崖絶壁―― その辺で一番高いビルの屋上―― に立つように、夜空を見上げる。
そして、吸い込まれてしまいそうなほど綺麗な澄んだ空に声にならない叫びをぶつける。
―― 俺は何故生まれてきた!
―― 俺には何故でかすぎる能力が備わっている?
―― 俺は愛される資格があるのか?!
手が届きそうな月に手を延ばしてみる。
当然つかめない。
さみしさを象徴するかのような夜風が垣根の身体を冷やす。
死んでしまおう。
ふいにそう思い、虚空へと倒れこむ。
そして気づくと自身の真っ白な翼に包まれ地面に横たわっていた。
ため息をつくと再度屋上に飛び立つ。
立ち並ぶ数々の超高層ビル。
その中に存在するちっぽけな自分。
大小様々な虚像がのしかかってくる街の中で垣根は一人心を何かに奪われるような錯覚に陥っていた。
日々をまるで野良犬のように愛を求め、心の水分を奪われ、カラカラになりながらふらつき回っている生活に嫌気が差していた。
真っ白な携帯電話を懐から取り出す。
その色は頭の先からつま先まで真っ白な[ピーーー]べき相手を思い出させた。
本当に心から思っているならば、それをみた瞬間、垣根の心はドス黒い感情に支配されるはずだ。
だが、垣根帝督の心はその携帯電話を眺めている時だけ、暖かな潤いと優しさで満たされる。
―― なぁ、*****。
俺はどうしたいんだと思う?――
憎むべき相手に問いかけて見る。
そいつを[ピーーー]ためだけに能力を研究し尽くし、磨いていった。
これは垣根の防衛本能だ。
心の根っこでは『信じたい』と思っているし、信じてもいる。
しかし、もし、万が一、再会した時『お前なンかいらない』と言われたら、そこで垣根の心は粉々に壊れてしまう。
そうならないために、垣根は思い込む。
こいつは殺さなきゃ行けない相手なんだ。
こいつに嫌われたって痛くも痒くもないんだ。
と。
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