66: ◆hZ/DqVYZ7nkr[sage saga]
2011/12/01(木) 05:59:33.50 ID:/QGrE+6vo
〜〜〜
風に吹かれていた。
街角には人影もなく、なくした『何か』を探し求め、他の何かを失った。
そんな一方通行に温もりなんて物はなく、心は冷め切ってしまっていた。
―― 死にてェ。
毎日毎日そんな事ばかり考え、風以外にはなにもない街をふらつく。
心を閉ざし、その風に包まれる。
そして、何処かに向かって叫ぶ。
―― 俺はここにいるンだ。と。
見えない涙は何処に零していいのかわからない。
あれからどうしているのだろう。
真っ黒な携帯電話をポケットから取り出す。
その色は黒い服を好んで着ていた自身を化け物と恐怖した親友を思い出させる。
―― あいつは今何をしてンだろうか。
今電話をかけたら、あいつを怖がらせるだけだろうか?――
一方通行には何もわからない。
―― あの女は元気だろうか?
あいつは俺の元から親友と共に消えた。
そういえば、あいつはこれをくれてからぱったりと研究所にこなくなったな……そンでその数週間後垣根も俺の元から消えた――
何かが不自然だ。
子供ながら一方通行はそう思っていた。
芳川はこの状況を見据えたようなことを言っていたし、仕組まれたものにしか見えない。
垣根が自分を怖がるなんて事もあり得ないと思った。
だが、もし今ある現実が真実ならば自分は心を保てないとわかっている。
だから確認できなかった。
今のままならまだ垣根も芳川も心の中にカケラが残っている。
そのカケラは太陽の破片のようにキラキラとしている。
それを失ってはいけない。
それを失ったら本当に心は凍りつき、本物のバケモノになってしまう。
だから、考える。
虚像の二人を決して失わない方法を。
―― 最悪の結末だけを考えよう。
期待するのはやめよう。
初めから期待なンてしなけりゃ傷つくこともねェンだから。
そして、名前を捨てよう。
学園都市は俺を人間だと思っちゃいねェ『能力』だけを見ている。
だったら名前なンていらねェ、名前を呼んでくれる人はもういねェンだから――
能力名の申請をした。
個人情報から出来るだけ本名を消した。
―― 俺はたった今から、学園都市最強の能力者『一方通行』だ――
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