過去ログ - 俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.12
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790:或る妹の選択  ◆ebJORrWVuo[sage saga]
2012/06/28(木) 02:22:57.80 ID:MCVMc+adP
 でも、それじゃ今のあたしは、満足しない。
 その姿を、格好いいだなんて思えない。
 だから、答えは決まっている。

「それは、無理」

 そもそも、あたしの兄は一人だけだから。

 そもそも考えるだけ無駄な質問。
 そして、考えた所で無駄な質問だった。

 格好悪く、無様で、頭悪くて、情けない、ケド、ずば抜けて格好良いのが、あたしの兄なのだ。
 他人の為に動いてる時だけ、兄の眼は生き生きとした目になる。
 とっても馬鹿になるけど、それでもとても優しい兄になる。

 他の兄なんて要らないし、あいつが兄じゃないなんて嫌。
 それが、高坂桐乃の揺るぎない回答だった。

「そうですか」

 御鏡さんは、あたしの回答を聞いてすっきりした表情をしている。
 余りショックを受けているように思えない。

「……あんた、まさかあたしを試した訳じゃないよね?」

 それだったら殺すけど。

「とんでもない。本気です。ですが、薄々と結果は分かってました」

 さらりと御鏡さんは、そんな事を言う。
 嘘。え、それって、バレてたって事?

「桐乃さんは、分かりやすいですから」

 …………。ムカつく。けど、結果が分かっていたというのは本当っぽいし、それならただ図星だったというだけで、怒れない。

「…………」

 黙りこむあたしに、御鏡さんは優しい表情に、少し悲しい色を混ぜた瞳で、大事な事を言った。

「桐乃さん。……あなたのお兄さんは、きっと、あなたのお兄さんである事を、辞められない。だからきっと、いつか不本意な形になってしまうと思いますよ」

 何を言っているのだろう。あたしは、あいつが兄じゃないと嫌なのだ。

「……分かってる」

 なのにあたしの口は勝手にそう答えた。何故か、胸がズキリと痛む。
 それでも。

「……僕の言いたいことは以上です。それでは、もう一つの話をしましょうか」

 あたしは、立ち止まる訳にはいかない。

「もう一つの話?」

 あたしは御鏡さんを見る。
 ……そうか、ここまで、結果が分かっていて。ここからの結果も分かっていて。
 その上での、忠告だったのか。

「はい。桐乃さん、僕に何か頼みたいことがあるんじゃないですか?」
「ホント、あんたって見どころあるよね。……ごめんね」

 振った相手に何を頼もうというのか。
 けどこの振られた相手も、自分を振った相手に頼ませようとするんだから、実は底意地が悪いのかも知れない。

「あたしと、付き合ってくんない?」



 どう転ぶか、それは分からない。
 だけど、せめて転ぶなら前向きに。
 躓くことが分かっているのであれば、前に飛ぶように。
 そうすれば、ゴールに少しでも近づける筈だから。



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