過去ログ - 俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.12
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或る二人の夜 10/10
◆ebJORrWVuo
[sage saga]
2012/07/01(日) 02:28:45.26 ID:LhEJpQT/P
ごうっ! と外から強い音が響いた。
それと同時、ブォンという独特の音を立てて、部屋の灯りが点いていく。
「…………」
「…………」
て、停電が直ったのだ。
俺は心底安堵して、明るくなった部屋を見渡す。
いつもの、リビングだ。
違和感があるとすれば、俺の上に桐乃が乗っている事だが、その内、文句を言いながら身体を起こして俺から離れるだろう。
そんときに蹴りの一つでも入れてくるかもしれないが、今の俺はそれを甘んじて受け入れるつもりだ。
あの変な桐乃より、いつもの桐乃の方が安心するからな。
「…………」
しかし、桐乃はどかなかった。も、もしかして停電直ったの、気付いてないのか?
「き、桐乃……? ほら、停電直ったみたいだから、離れろって。もうこんな体勢してなくて大丈夫だぞ」
そう声を掛けてやる。
しかし桐乃は、動かない。
まさかと思うが、寝てるのか? さっきまで寝ぼけてたとか?
俺がそんな懸念をしていると、その懸念を破るように、桐乃が口を開いた。
「……ってない」
「あん?」
「まだ……停電は直って、ないって、言ったの」
は? 何を言ってんだ。蛍光灯もついたし、暖房の駆動音も聞こえる。
実はこれが俺の幻覚だっていうなら直ぐに病院に行く必要があるよな。
「あたしは……、まだ……真っ暗で、寒くて……だから、その……」
桐乃がもぞもぞと動いて、俺の見える位置に顔を持ってくる。
近い、お互いの息が掛かる距離。
「その……、だから……、あ、あたしは……」
正直、桐乃が何を言っていて、何を伝えようとしてるのか分からない。
しかし、何かを必死で伝えようとしているのだけは分かった。
……全く。よく分からない、妹様だな。
「わかった。わかったぜ、桐乃。まだ、停電は続いている。辺りは真っ暗だ」
俺はそう言いながら、桐乃の頭を撫でてやる。
よく分からないが、そうであって欲しいと願うなら、そんぐらい要望を聞いてやる。
「だから……、停電が直るまで、俺が側にいてやる。心配すんな、ちゃんと一緒に居てやるから」
「……べ、別に……あ、ありがとう」
桐乃の態度に、くくっ、と笑ってしまう。素直じゃないのか、素直なのか。
そんな俺の笑いにむっとしたような表情を浮かべたが、直ぐに素直な、まるで幼い頃のような、純粋な笑顔を浮かべると、また俺の胸元へ頭を落とした。
やれやれ。
桐乃の頭を撫でてやりながら、俺は天井を見上げる。
よく分からないけどさ。
たぶん、この先もこの妹が何を考えているかなんて、分からないんだろうけどさ。
それで良いんじゃないかと、今は思える。
もちろん、これからもさ、桐乃は何を考えてんだーって頭を抱えてる事はあるだろうがさ。
分からないからこそ、続けていける関係ってのもあるんじゃないか。
分からないからこそ、分かろうと歩み寄る事が出来るんじゃないだろうか。
だから今はいい。俺はこうやって、妹の頭を撫でて。
それで妹がおとなしくなるのであれば。
それは、きっと間違えてはないことなのだろうから。
これが、答えの先延ばしであるとしても。
先延ばしをする事で、答えまでの時間を伸ばす事ができるのであれば――。
おわり
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