過去ログ - 禁書「イギリスに帰ることにしたんだよ」 上条「おー、元気でなー」
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◆ES7MYZVXRs
[saga]
2012/08/21(火) 10:54:19.33 ID:g/v3slEao
麦野は小さく舌打ちをすると、横へ跳んで放たれた槍をかわす。
黒夜はそれを追って、手首を動かして槍を横に振って麦野の体を両断しようとする。
それに対して麦野は盾を出して難なく防御した。
そして直後、麦野は右の掌近くから再び光線を放った状態で、そのまま手を素早く上に振った。
それはまるで光る剣を振っているかのようであり、その切っ先の軌道上には――――。
「……ぁ…………」
黒夜が小さく声を出す。
空中へ放られた無数の物体がその瞳に映っている。
それはビニールのような材質の明らかに人工的な無数の手と、まだ幼い、子供らしい小さな手だ。
麦野の光線によって切り落とされた、黒夜海鳥の両手と義手だった。
麦野は初めから分かっていたはずだった。
黒夜は掌から窒素の槍を生み出す能力者、それならばどうすれば無力化できるのか。
麦野はよく分かっていて、その上であえてそれをしなかった。
以前までの彼女ならば手を切り落とすどころか、頭を吹き飛ばして無力化していたことだろう。
しかし、今の彼女は敵にも情というものをわずかにだが持つようになっていた。
暗部の世界ではそれはただの甘さとして、切り捨てなければいけないものだ。
それでも、麦野は今では不思議とそんな事は思わない。
理由なんて分からない。考えるのも面倒くさい。
ただ、自分がそうしたい。それだけで十分だと思っていた。
だから、黒夜の両手を切り落とすなんて事はできればあまりやりたくなかった。
彼女が操られていて、自分の意志で襲ってきているわけではないことは分かっている。
その上で、能力を奪うような真似はしたくなかった。
能力者にとって自分の能力というのは大切なアイデンティティの一つだという事は、レベル5である麦野自身が良く分かっている。
それをたった今、この手で奪ってしまったのだ。
義手を使えば、両手を失っても能力自体はまだ使えるのかもしれない。
だが、やはり本来の自分の手で能力を使えないということは、彼女にとってもダメージが大きいはずだ。
機械はあくまでも補助、能力を使っているのは自分自身の体なのだ。
「…………」
麦野は黙って黒夜の様子を眺める。
両手を切断されているのだが、失血死する事はないはずだ。傷口は高温の光線によって焼かれており、血も出てこない。そういう風にした。
黒夜は今自分の能力が失われたことを気にも止めず、辺りをひたすらキョロキョロと見渡して逆転の策を考えているようだ。
もしも、この洗脳が解けて自分の腕を見たらどう思うのか。
それを考えると、どうしても苦いものが胸の中に広がっていく。
ドンッという音が聞こえた。
それは先程麦野に吹き飛ばされた絹旗が思い切り地面を蹴る音で、真っ直ぐこちらへ向かってきていた。
麦野は歯をギリッと鳴らす。
ここまで人をオモチャのように扱う人間が許せない。
自分も人のことをとやかく言えるような人間ではない。今までだって非人道的な事は沢山やってきた。
それだからこそ、今では超えてはいけない線というものが分かる。
コンマ数秒後、二人は激突した。
レベル4の絹旗最愛とレベル5の麦野沈利。
どちらが倒れたかは言うまでもない。
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