過去ログ - 禁書「イギリスに帰ることにしたんだよ」 上条「おー、元気でなー」
1- 20
517: ◆ES7MYZVXRs[saga]
2012/11/25(日) 02:39:13.86 ID:VBYVP1jFo

 
バキィィィィ!!! と。
幻想殺しの宿った右腕が捉えたのは、食蜂の顔面だった。
完全に不意を突かれた一撃に、食蜂は為す術なくかなりの勢いで床に倒れこむ。

食蜂は混乱し過ぎて何も考えられない。
なぜ体がピクリとも動かないのか。なぜ自分は無様に床に仰向けに寝ているのか。
なぜ上条は自分を殴り飛ばしたのか。

分からない。何も。
ただ視界に映るのはこの部屋の高い天井だけだ。
それもかなり暗い。これは夜の闇のせいだけではない。

「……う……そ…………」

食蜂の綺麗な髪は乱れ、その顔のほとんどを覆っている。
そのせいで表情は読み取りにくく、何を思っているのかは掴みにくい。
それは彼女にとって幸いだった。

上条の幻想殺しによって、この能力は全て解除されてしまった。
もう全てが終わりであり、自分は敗れたのだという事は理解している。それは受け止めることができる。

だが、上条がこの能力を破ったという事だけは、どうしても認めたくなかった。

確かに上条には能力が効いていた。記憶の改ざんも成功していた。
それに自分で正しい記憶を思い出したというわけでもない。
もしそうだったなら真っ先に食蜂は気付いて、こうして床に転がっているなんていう事にはならなかったはずだ。

つまりそれは、記憶の改ざんを受けて、その上で上条はインデックスの為に動いたという事だ。
今まで上条が守ってきたのは食蜂で、その邪魔をしてきたのがインデックスだと頭に刷り込んでも。

上条は、インデックスを守った。

世界が崩れていくのを感じる。
もしかしたら、前提から間違っていたのかもしれない。
フィクションの世界にあるような絆は現実にも確かに存在している。
この洗脳能力だけでは変えられないものも確かに存在している。
食蜂操祈は、別に配役を決める存在ではない。

彼女の周りだけが脆い世界だった。

自分が本物の絆を持っていないと知っただけで、そんなものは現実には存在しないと決めつけた。
逆に考える事もできたはずだ。
こんな簡単に世界を変えられるのはおかしい。それなら。
ただ自分が……食蜂操祈がおかしいだけではないのだろうか。
いつもは人気者のように見えるが、そこには本物の絆が存在しない。

そう認めるのが、怖かっただけではないのか。

涙が、あふれる。
もう、嫌だった。何も考えたくない。
食蜂は声を出さずに静かに泣いて、意識を手放した。

目が覚めればそこには、自分の信じた世界があると願って。
 


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/1634.09 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice