過去ログ - 禁書「イギリスに帰ることにしたんだよ」 上条「おー、元気でなー」
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720: ◆ES7MYZVXRs[saga]
2013/06/27(木) 14:53:29.58 ID:g9sjJPBmo

しかし。

「……えへへ、もう食べきれないんだよぉ…………むにゃむにゃ……」

「……へ?」

「あっ……それも、私の……それも……それも…………ふへへ」

「…………」

一瞬、上条の頭の中が真っ白になった。
それはもう、文字通り今までゴチャゴチャしていたものが一気に消え去ったかのように。

上条は一度大きな溜息をついた。
そしてその後、彼女の頬に手を伸ばして横にグイグイ引っ張る。

「うへへへへ…………いだっ、いだだだだだだだだだっ!!!」

「おーい起きろインデックスー」

「えっ、と、とうま……? って、いたいいたい!! ちょっと何ほっぺ引っ張ってんのさ!!!」

「いやお前が随分と幸せそうに寝てたからさこの状況で。それにほら、寒い時って眠るとヤバイって言うじゃん」

「いたたたたたたた!!! だから起きてるってば!!!!!」

彼女の言葉に、ようやく上条は手を離す。
その赤くなった両頬を擦りながら、彼女は恨めしげに涙目でこちらを睨んでくる。
まぁ死ぬほど心配させたというお返しにはこれくらい必要だろう。

だが、そこで上条はふと思い出す。
そもそも彼女まで転げ落ちたのは、おそらく自分のせいだ。

「……あー、その、お前まで一緒に落ちてるっていうのは」

「あっ、そうだよとうま! 何が『任せとけって』かも。案の定持ち前の不幸発揮しまくりで凄い事になっちゃってるし。
 お陰で慌てて行った私まで転がり落ちちゃったじゃない。こんな事なら最初から私一人で行くべきだったんだよ」

「その……すみません……。けど、ヤバイと思ったならインデックスまで来なくても……」

「とうま」

インデックスは両手で上条の頬を挟み込んだ。
見るからに不満そうな表情を浮かべ、ジト目でこちらの目を覗き込んでくる。

「とうまが危ないことになって、私がそのまま動かないと思っているのかな?」

「……それは」

「はぁ……自分はいつも死にそうになりながら誰かのために動き回ってるのに、どうしてそれを他の人で考えられないのかなぁ」

やれやれといった感じに首を振るインデックス。
それに対して上条は何か言いたい気持ちは出てくるのだが、返す言葉も無い。彼女の言葉はどうしようもなく正論だからだ。
そうなればもう、苦々しく視線を逸らす事しかできない。

すると、彼女はギュッと上条を抱きしめた。

「怪我とかしてない? 痛いところとかは?」

「……あぁ、大丈夫だ。インデックスは?」

「ほっぺが痛いかも」

「うぐっ……その、悪かったって」

「ふふ、冗談だよ。大丈夫、私も怪我とかはしてないから」

「……あと、ごめんな。こんな事になっちまって」

「いいんだよ、ばか」

彼女の言葉はその中身はともかく、とても柔らかくて心地良いものだった。

こうして彼女に抱きしめられる事は何度かあった。
その度に上条は、いつも暖かい安心感を覚える。どんなに不安でもそれを一瞬で和らげてくれるような、絶対的な安心感を。
上条には母親の温もりという記憶が無いので分からないが、それはこんなものなのではないかとさえ思った。



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