過去ログ - 禁書「イギリスに帰ることにしたんだよ」 上条「おー、元気でなー」
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◆ES7MYZVXRs
[saga]
2013/07/16(火) 17:36:32.37 ID:wF64hV+jo
少女は慌てて頭を下げる。
「ご、ごめんなさい! でも、その、あの人が!!」
「あん?」
お姉さんは怪訝そうな声をあげた。最初のお嬢様みたいだというイメージが少し壊れる。
少女がお姉さんの後ろへと隠れると、先程のおじさんが近寄ってきた。恐怖で思わずお姉さんのウェアをギュッと握る。
「あ、麦野さぁん! そっちは何か手がかりとかあったぁ?」
「……あー、そういう事か」
「へっ…………きゃあ!!!」
なんとお姉さんは片腕でおじさんを掴むと、思い切り投げ飛ばした。
お嬢様みたいだというイメージに更にヒビが入る。
おじさんは雪まみれになりながらよろよろと立ち上がる。ウルウルと涙目なのがとてつもなく気持ち悪い。
「な、何するのよぉ……私の体じゃないけどビックリするじゃなぁい!!」
その言葉に対して、お姉さんは無言で親指を使って少女を指し示す。
そしてその後、人差し指でおじさんの顔を指した。
少女にはよく分からない動作だったが、おじさんには伝わったらしい。
おじさんは何か合点がいった様子で、ポンッと手を叩くと、
「……なるほど、確かにこれじゃただの不審者ねぇ。うっかり失念してたわぁ」
「うっかりで他人の人生壊しかけるっていうのも怖いものね」
何か二人で納得している様子ではあるが、少女からしてみれば全然安心できない。
するとおじさんがニコニコと笑顔を見せながら話しかけてきた。
「あー、ごほん! それじゃあ改めて質問するが、君は何かおかしな者を見たかね? 例えばトラブルに巻き込まれてそうな男女とか」
「…………」
「……あ、あれ?」
「あのさ食蜂、いきなりキャラ変えても気持ち悪いことに変わりないわよ」
そんな当たり前のことを指摘され、おじさんは悔しそうにお姉さんの方を見る。
確かに元の女言葉よりはまだおかしくはない。だからといって、先程まで話していた言葉遣いが無かったことになるわけではない。
もう既に少女の中では、このおじさんは会話をしてはいけない分類に入っており、その心のシャッターをこじ開けることは困難なものになっている。
お姉さんは虫を追い払うように、シッシッとおじさんに手を振ると、
「はいはい、じゃあ不審者はどっか行ってなさい。それで、私には教えてくれるかしら? この辺りで何かおかしなものを見なかった?」
「ま、待ちなさいよぉ! なによ自分だけまともな人みたいに装って! 騙されちゃダメよぉ、この人いつまでも人の恋人付け狙うヤンデ」
「殺す!!!!!」
凄まじい轟音と振動。
そしてその元が、お嬢様オーラを持っていたお姉さんである事を理解するのに少しかかった。
いや、もう既に少女の中でお嬢様というイメージは完全に崩れ去っていた。
恐ろしい形相で、白いビームのようなものを連発する彼女は怪物にしか思えない。
しかもそのビームというものがオモチャのレベルではなく、実際にゲレンデの雪を吹き飛ばす程の威力を持っている。
そんなこの世のものとは思えない光景に、少女は涙目で震えるしかない。
「避けんなクソがァァああああああああああああ!!!!!」
「ちょ、ストップストップ!! こんなの当たったら私じゃなくて、このおじさん死んじゃうってばぁ!!」
この大惨事をどうするか。
いや、少なくとも少女にはどうしようもない。
これは嵐のようなものだ、自然災害だ。収めようとして収まるものなどではなく、ひたすら過ぎ去るまで耐えなければいけない類のものなのだ。
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