過去ログ - 禁書「イギリスに帰ることにしたんだよ」 上条「おー、元気でなー」
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957: ◆ES7MYZVXRs[saga]
2014/03/04(火) 07:43:49.89 ID:4ipaVk6zo

「あなたを倒して自分が主人公になれ、そう言いたいのですか?」

「まぁ、そんな感じだな」

「はは、そう単純な話でもないでしょう。ここであなたを倒した所で、御坂さんが自分の事を見てくれるとは思えませんし」

「でも、お前は見てるだろ。御坂を悲しませた最低野郎をぶっ飛ばす、正義のヒーローって奴の事を」

「ただの自己満足ですよ、それは」

「人生ってのは大体そんなもんだと思うけどな。たかだか十六年生きただけで何言ってんだと思うかもしんないけどさ」

「……ありえない程濃密な人生を送ってきたあなたが言うと、妙に説得力が出てきますね」

エツァリは小さく笑みを零す。
その様子は、上条が見た彼の表情の中でもっとも楽しそうだと思ったくらいだった。

目の前の、これから主人公になる男は拳を握りしめる。
対して、上条は悪役。この場において倒されるべき存在だ。
とは言え、簡単に負けてやるつもりもない。敵は敵で全力で向かって行くからこそ、散り様も映える。

先に動いたのは上条だった。

体全体に蓄積されたダメージに若干フラつきながら。
それでも、全力で目の前の主人公に突撃する。
ほとんど倒れこむように、結果的に全体重が乗った渾身の右ストレートを放つ。


コンマ数秒後、上条の顎に伝わる強烈な一撃。


ふわっと体が浮き上がるのが分かる。
分かってはいるが、どうしようもない。
感覚的にはスローモーションで、上条は背中から地面に叩きつけられた。

頭を揺さぶられたせいで、吐き気がこみ上げてくる。
視界にはどんよりと重い雲と、そこから落ちてくる白い雪だけ。
それもぼんやりとした視界では正確に捉える事ができない。

綺麗なカウンターをくらったという事くらいは分かっていた。
あれ程直線的な攻撃に合わせる事くらい、世界の暗い場所を生きてきた者なら容易にできただろう。
ヒーローは悪役の拳をわざわざ受けてやる必要もない。

決して、負けようと思ったわけではなかった。
ただ、実際に大きくダメージを蓄積していたのは上条の方で、戦いが長引けば長引く程不利になるのは明らかだった。
だから、捨て身の攻撃をするしかなかったのだ。

ぼんやりとした視界はハッキリするどころか、更におぼろげになっていく。
そんな中で、上条は重い口を開く。
悪役は悪役らしく、やられ際のセリフの一つくらいあってもいいだろう。

「ちくしょう……が……」

上条の意識は暗闇へと引きずり込まれていく。
次々と頬に落ちてくる雪の冷たい感触も、次第に薄れていった。



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