過去ログ - 禁書「イギリスに帰ることにしたんだよ」 上条「おー、元気でなー」
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980: ◆ES7MYZVXRs[saga]
2014/05/01(木) 02:46:56.98 ID:wiguRyO8o

今度はいつものように、インデックスの鋭利な歯が上条の頭にめり込む。
こんな光景を“いつものように”と表現する事に違和感を覚えなくなってきた辺り、上条の中の基準も随分と鈍ってきたものだ。

そう、いつもの光景だ。

目を閉じれば、いくらでも思い出せる。
楽しかった事も、嬉しかった事も、悲しかった事も、辛かった事も。
それらは彼女の笑った顔や怒った顔といった、様々な表情と共に次々と浮かんでくる。

その時は何でもないような日常でしかなくても。
後から思えば、かけがえのない大切な時間だった。

でも、上条は何も考えていなかった。
こうしてインデックスと一緒に居る時間も、いつか終わりがくるという事。
そして、それを惜しむ日がくるという事を。

こんな幸せな時間がいつまでも続くものだと、勝手に思い込んでしまっていた。

「……とうま?」

上条が黙り込んだ事を気にして、背後からインデックスが声をかけてくる。

彼女を心配させたくない。
そう思って、上条は軽口の一つでも叩こうとした。

しかし、口を開いたところで、言葉が喉につっかえる。

これはマズイ、という直感。
意識しないようにしていた事だっただけに、それは容易く上条を飲み込む。
そもそも、意識しないようにという意識がある時点で、常にそれは近くで口を開けていたのかもしれない。

落ちていくような感覚があった。
きちんと両足で地面を踏みしめているはずなのに、ふわふわとした浮遊感が体を包み込む。
何とか、しがみつきたい。その強い想いが体を巡っていく。

一定の間隔で刻まれていた、雪を踏みしめる音が途絶えた。
それでも、舞い落ちる雪は決して止まる事はなく、静かに少しずつ二人を白く染めていく。

「明日のこの時間には……もうインデックスはイギリスなんだよな」

「……うん」

会話が途切れる。

インデックスの声は静かで、夜の雪に溶け込んでいくようだった。
背中には彼女の温もりを感じる。
こんなにも、近くにいるのに。


離したくなかった


「あのさ……」


だから、言葉が零れた。


「どこにも……行くなよ」


ダメだと分かっていたはずなのに。
いつだって、我慢していたはずなのに。

言葉を、塞き止める事ができない。

「何で科学やら魔術やらの都合に俺達が振り回されなきゃいけないんだよ。
 そんなの俺達には関係ねえだろ、このままいつもみたいに過ごす事の何が悪いんだ」

次々と、溜め込んでいたものが溢れてくる。
今まで色々な言葉で、意志で押さえ込んでいたものが、溢れてくる。

「インデックスだって、こんな事情がなかったらここに居たいんだろ。
 だから……だからこそ、またここに戻ってきたんだろ。それなら……それならさ!」

声に熱が帯びていく。
周りの雪を溶かさんとばかりに、全てを溶かしてなくしてしまわんばかりに。
二人を取り巻く面倒な事情全てを、熱で消しまおうとするように。



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