過去ログ - 真・恋姫無双【凡将伝】その５ -SS速報VIP

過去ログ - 真・恋姫無双【凡将伝】その５

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5:一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo.[saga]
2011/12/06(火) 22:50:43.42 ID:8gQKD9ePo
side　楽進

「く、あ！」

一瞬の隙をつかれ、右足が刈られる。
しまった、と思う間もなく、背中に大地を感じる。
それが優しく感じるのは対峙した相手…二郎様が手加減してくださったからだろう。

「恐れ入りました」
「んにゃ、もう凪に教えることはないかもわからんね。今日も互角だったしさ」
「何をおっしゃいますか！二郎様の千変万化の技巧！未だ私の及ぶところではありません！」

二郎様に誉めていただいたのは、その、なんだ。純粋に嬉しい。
今日だって十本中五本は取れたし。
でも、違う。
私が半ば力づくで、勢い任せで拾ったのに対し、二郎様は華麗にその技の冴えを披露してくださる。
ある時は足を刈られ、ある時は重心の移動だけで。その技の多彩さはまさに芸術と言ってもいいと思う。
それに、ここぞという立ち合いではことごとく勝てない。
きっと、二郎様は私にその技の冴えを披露してくださっているのだろう。ありがたい限りだ。
二郎様の教えを受けられるのは私を含めてほんの数名らしい。
沙和にそのことを教えられたときは、はしたなくもはしゃいでしまったものだ。
勘違いするところだった。

私は二郎様の特別なのだと。

そんなこと、ありえないのに。
自嘲するわたしのなんて卑小なことか。
天下国家を視野に入れ、袁家を富ませ、売官を撤廃し、更に見聞を広めるために旅立とうとする。
私などがこの方のおそばにいていいものだろうか。
いわんや、お慕いするなど論外ではなかろうか。
武をもってお仕えするにしてもそれは私ごときが口にしていいことではない。
典韋様を見るとそれが如実に分かる。
二郎様の傍らにいるにはあれほどの武がきっと必要なのだろう。
だとすれば私は…。

「凪？凪ってばよ」
「は、はい！失礼しました！」

いけない、気がそれていた。これじゃ、いけない。

「こんな感じ？」
「はい。そして臍下丹田に気を集め、それを思う起点から放出するのです。
　そうですね、利き腕の手のひらが一番やりやすいでしょう」
「ほむほむ。じゃあこう、か」

自然体から腰を落とし、右手を前に出す二郎様。

「でもあれだよね、これじゃ気が出てるか客観的にはわからんよね」
「こうすればよろしいです」

二郎様の手に私の手を合わせる。
固い手のひらが二郎様の体温を伝えてくる。
とくん、と血流すら感じられる。これならば僅かな気の流れも感じ取れるだろう。

「はぁぁ……」

いつになく真剣な面持ちで集中される二郎様。
つい、見とれてしまいそうな心を押し殺し、右手に集中する。

二郎様の気を感じようと。見逃すまいと。

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