過去ログ - 真・恋姫無双【凡将伝】その５ -SS速報VIP

過去ログ - 真・恋姫無双【凡将伝】その５

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6:一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo.[saga]
2011/12/06(火) 23:16:05.90 ID:8gQKD9ePo
side　楽進

裂帛の気迫。
匈奴から漢朝を守護する武の象徴、袁家。
それを支える四家の一つ、紀家。
その当主たる二郎様。
それが凡夫であるわけがない。
正直に言おう。
私は二郎様の気迫に自失していた。

「俺のこの手が光って唸る！
　お前を倒せと輝き叫ぶ！」

光！木火土金水を束ねたらば、即ち光となるという。
二郎様はそれを本能的にわきまえてらっしゃるのだろう。
そうなれば、それが発動すれば、合わせている私の手など吹き飛んでしまうだろう。

だが、それでいい。

二郎様が気に目覚められるのであれば片腕など惜しくはない。
むしろ、本懐だ。

せめてその痛みを抱えて、覚えていよう。
この私が二郎様にできることなどそのくらいなのだろうから。

「ぐふ！」

苦痛の声は…二郎様？

「いかんな、俺にはどうやら気という奴は鬼門らしい…。
　すまんが、肩を貸してくれ…」

膝をつき、苦しげな二郎様。いけない。
きっと練り込まれた気が放出されず、お体を害したのだ。
慌てて二郎様に寄り添う。

「は、はい！申し訳ありません！
　私の修練が未熟なばかりに、二郎様にご負担をおかけしてしまいました！」

どうしよう。私のせいだ。
人に教えられるほどに練達していないのに！

「いや、凪に無理を言って教えを乞うたのは俺だ。
　無様を晒したな。笑ってくれていいさ」
「何をおっしゃいますか！
　私のせいで二郎様のお体に何かあったらと思うと、軽率を悔やんでも悔やみきれません！」
「いや、どうやら身体は大丈夫なようだ。
　はは、とことんこの身は気という奴と縁がないらしいさ」

私を気遣ってか、おどけてそんなことをおっしゃる。
でも、ほんとにお体に異常はなさそうでほっとする。
控えてらっしゃった陳蘭様が差し出した水をぐび、と飲みながら何か考え込む二郎様。
きっと、天下国家に思いを馳せてらっしゃるのだろう。
凛々しいそのお姿に胸がざわめく。いけない。

結局私は何も言えず、何も伝えることはできず。
出立の日にも黙ってお背中を見守ることしかできなかったのだ。

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