過去ログ - 魔王「世界の半分はやらぬが、淫魔の国をくれてやろう」
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434: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2011/12/15(木) 03:03:44.43 ID:59deYyZzo
彼女が、近づく。
上体を起こしながらベッドの上で待つ勇者へ。

縁に腰掛け、靴を脱ぐ。
踵が高くサンダルにも似て露出度の高い、勇者の世界では見かけないタイプの靴だ。
片足、もう片足と順番に脱ぎ去ると、待たせた者の方へ体を向けなおす。

四つん這いに、近づいていく。
二人分の体重をかけられたベッドが軋み、ぎしぎしと音を立てる。
ランプの灯に照らされた彼女の影が、室内を彩った。

そのまま、止まらず――彼の胸元へ、体を預ける。
しな垂れかかった彼女の体を受け止めると、ゆっくりと体を倒し、横になった。

勇者「…もう、泣かないのか?」

返答は無い。
彼女はただ静かに、彼の胸に顔を押し付け、匂いと、温もりを感じていた。
ひたすら、記憶に残そうとするかのように。
細く、長い息遣いが妙なくすぐったさを伝える。

堕女神「………忘れられない夜を、下さいませ」

顔を胸に押し付け、きゅっとシャツの裾を握ったままで呟く。
まるで薄いガラスのように、儚く、透き通った声で。
顔は、見えない。
見えないから、逆に――彼女の心が、伝わった。


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