過去ログ - アンリ士郎「あ、次の試合いつだっけ。」 嫁ライダー「安価で決めましょう」
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207:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga]
2011/12/11(日) 18:41:45.40 ID:qfndljiL0
 僕はそうした経験を何度も持った。僕は病質的な、気の小さな子供だった。
 そして日が経つにつれ、そういう悪夢の持つ真の意味は、久しく僕から喪われた。
 生きているうちに、健康は取り返しのつかぬ程に悪化していた。
 僕は人と同じように、いつかは迎えるであろう死を、さして恐れてはいなかったのだ。
 
 それは僕が死ぬまで覚える筈のないこと、この悪夢のような忌わしい恐怖なぞ……断じて。
 でもそのまま僕の現実であることを、僕は遂に認めざるを得なかった。
 明日の朝目が覚めてみれば、昔と同じ健康な身体に復っていて、耳元に囁いてくる声も、視界の外にちらつく朧な人影も
 不愉快な視線も、気持の悪い微熱も、みんな掻き消すように消えてしまい、
 自由に、晴々と、教団の雑沓に身を置くことが出来ると、――そういう無益な空想をしない病人が一人でもいるだろうか。

 しかしこれは夢ではない、自由に歩き廻る空想はもう決して復って来ることはない。
 僕のような重い病状の人間は、或る短い期間の後、確実に用済みとみなし排斥され死ぬのだ。
 そういう現実、現に在るが如くに在る以外にはもう決して在り得ない現実が、
 僕に与えられた唯一の人生であることを、僕は長い迷妄の後に厭でも思い知らされた。
 僕は死ぬまでこの夢から覚めないだろうし、その時期はもうじき、間違いなくやって来るだろう。


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