過去ログ - アンリ士郎「あ、次の試合いつだっけ。」 嫁ライダー「安価で決めましょう」
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954:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/01/20(金) 15:57:42.40 ID:YeL03Idp0
 真夜中を過ぎて、雨は激しさを増したようだった。
 灯りを消した部屋の中は暗い。家具の輪郭さえ朧気にしかわからない。
 閉めきった窓が風に揺れる。
 不快な湿り気を帯びた空気が、降りやまぬ雨の気配を伝えてくる。
 こんな夜更けに目を覚ましたのは、彼にしてはめずらしいことだった。
 悪い夢を見ていた気がするが、はっきりとは覚えていない。
 雨のせいかもしれないと思う。いつだったか、自身が敬愛した『冬の聖女』が死んだのも、こんな酷い雨の夜だった。

 風に震える木々の葉音が耳に障った。地鳴りのような低いうなりを感じる。
 押し寄せる濁流を連想させる音だ。聖杯へと身を転じ還った彼女のことを思いだして
 彼は久しく忘れていた人間らしい感傷に少し不安になった。
 かつては聖杯戦争の砦としても使われていたというこの館は、サーヴァントの襲撃に備えて、澱んだ特製の腐葉土に囲まれている。
 自身の魔術属性である水と相性の良い土を媒介に、蟲術の媒介として高いアドバンテージを得るためだ。
 彼はそのことで幾度となく彼女にアドバイスを聞かされた。

 安い黒チョークで無造作に壁に描きつけられた膨大なる術式と案は
 まるで自らが体験した事実のように彼の心に今でも焼きついている。
 彼女は、それほどまでに恐ろしく、そして美しい光景を描き出す才の持ち主なのだ。
 そのことが、今でも少し恨めしい。


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