506:以下、あけまして[saga]
2012/01/03(火) 01:41:24.88 ID:eLdT6SB4o
あたしに先輩からの告白を相談してきた妹ちゃんは本当に可愛かった。何で神様はこんな可憐な生き物を創造して、あたしの側に配置したのだろう。あたしはそんなとりとめのないことを考えなが
ら妹ちゃんの言葉を待っていた。正直に言うとこの次の話はわかっていたのだ。妹ちゃんは男の子に関心がない(同性愛的な意味ではないことは委員長ちゃんに釘をさされていたけど)。妹ちゃん
は親友のあたしが先輩に恋していることを知っている。だから、あたしは何の心配もしていなかった。いや心配はしていたのだけれど、それは心配の方向が少し違っていた。あたしは妹ちゃんのこ
とではなくて委員長ちゃんのことが心配だった。委員長ちゃんは幼馴染の先輩を密かに慕っている。委員長ちゃんはあたしたちのグループとは少し距離を置いていた。むしろ、もう少し真面目で成
績のいい女の子たちとかと一緒に過ごしていた。だから、委員長ちゃんは妹ちゃんとそんなに親密というわけじゃないけど、それでも妹ちゃんとはそれなりに親しい仲といっても過言ではなかった
だろう。たまに時間が会うと3人で一緒に帰ったこともあったし(その時のあたしの複雑な心境はおわかりいただけるだろうか。元カノと今惚れている彼女、あるいは元彼と今惚れている彼氏と一
緒にいたようなものだから)、先輩の告白でどんなに委員長ちゃんが傷ついたか考えるだけでも心が痛んだ。
でも。妹ちゃんが真剣な表情であたしに語りかけた言葉はあたしの想像をはるかに超えたものだった。
「妹友ちゃん、ごめん」
何であたしに謝るのだろう? あたしが好きだということになっている先輩に告白されたから?
「あたし、先輩とお付き合いしてもいいかな」
あたしはその瞬間、妹ちゃんの話している言葉の意味が理解できなかった。あたしがいるのにとか、そういう自惚れた意味ではない。妹ちゃんはまだ恋愛に興味がなかったんじゃないの。
真っ白になって何も考えられないあたしに、妹ちゃんの言葉が追い討ちをかける。
「あたしね、少し先輩のことが気になるかも」
「それで、本当はいろいろ考えなきゃいけないこともあるんだけど」
「もう、疲れたっていうか。そろそろいつまでも結ばれることのない人のことは忘れなきゃいけないし」
何の話しているの? 妹ちゃんにも好きな人がいたの? それでその人とは結ばれない運命なの?
その時は本当に混乱していた。妹ちゃんくらい可愛いなら振り向かない相手なんていないだろう。それでも、妹ちゃんが諦めなきゃいけない相手。
正直に言うと、あたしはその時ずいぶんと自分勝手な感想を抱いた。妹ちゃんの方から好意を抱いていながら結ばれることはないと諦観している相手。それは、禁断の恋の相手以外には考えられな
いのではないか。まさか、あたし?
「妹友ちゃんが先輩のことを好きだって知ってるのにごめん」
「あたし、先輩と付き合ってみるね。ごめんね、妹友ちゃん」
あたしの意思に反して、これまで演じ続けた自分が声を出した。
「妹ちゃん、よかったね」
「妹友ちゃん・・・・・・」
「先輩が妹ちゃんを選んだんだもん、自信を持ちなよ」
「・・・・・・」
「あたしは大丈夫。もともと惚れっぽいしさ。すぐに好きな人見つけちゃうから」
・・・・・・あたしの言葉は妹ちゃんの心を動かしたようで、あたしと妹ちゃんの絆は更に深くなった。
妹ちゃんを手に入れた先輩は、すぐに妹ちゃんが今までのお相手のように自分のいいなりになるような子ではないことを思い知ったようだった。学校で一番人気があり学校で一番好き勝手に過ごし
ていた先輩は、今では妹ちゃんが気まぐれに見せる好意に飛びつくくらいに妹ちゃんに夢中になったのだ。学内では噂が流れていた。先輩はすぐに妹ちゃんを怒鳴る。妹ちゃんが自分の思うように
振る舞わないと妹ちゃんに当り散らすとか。それらの噂には全く信憑性がないわけではなく、根底に流れている事実は本当のことだったと思う。ただ、乱暴者の先輩の精一杯の威嚇に妹ちゃんが全
然動じていないことはあまり知られていなかった。それは、妹ちゃんのすぐ側にいたあたしとかグループの女の子しか知らないかもしれない。
あたしは本当に傷ついていた。妹ちゃんを失ったことに。周りの子たちはあたしが先輩に失恋したと思い、腫れ物に触るようにあたしを扱ってくれた。特に妹ちゃんと一緒の時は、グループの子が
さりげなくあたしと妹ちゃんを引き離そうと努力しているのがわかった。
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