510:以下、あけまして[saga]
2012/01/03(火) 01:47:31.41 ID:eLdT6SB4o
あたしはようやくその時我に返って、妹ちゃんに質問した。
「妹ちゃん、知り合いなの?」
「・・・・・・うん。お兄ちゃ、兄貴。お母さんに言われて迎えに来たんだって」
やっぱり・・・・・・・。
「じゃあ、お兄さんに悪いし今日は帰ったら?」
「ううん。気にしなくていいの妹友ちゃん。それに、今日のカラオケって彼氏先輩も待ってるし」
「先輩にはあたしから説明しておくから。せっかくお迎えに来てくれたんでしょ? お兄さんに悪いよ。一緒に車で帰れば?」
「・・・・・・じゃあ、あたし少し寄って行くところがあるから」
妹ちゃんは憮然としている様子のお兄さんに止めを刺した。
「え? 一緒に帰らねえの」
「お母さんにはご飯までには帰るって言っておいて」
「え・・・・・・え?」
「じゃ、行こ。遅くなっちゃうし」
妹ちゃんはあたしの方を向いて話しかけた。
え? 本当にいいの。近親相姦かどうかはともかく雨の中をわざわざ迎えに来たお兄さんが気の毒になったあたしは、初めて直接お兄さんに話しかけた。
「あの。すいません、お兄さん。せっかくお迎えにいらしたのに」
「い、いえ」
お兄さんは律儀に礼儀正しくあたしに返事をした。
「ちゃんと遅くなる前にはお返ししますから」
「い、い、い、いやいやいや。君に謝ってもらうことじゃないし」
お兄さんはびっくりした様子であたしに応えてくれた。
・・・・・・いい人だな。男の人に関心がなかったあたしでもそう思う。妹ちゃんのお兄さんだったからかもしれないけど。もう少しお兄さんとお話ししようと思ったあたしの次の言葉は妹ちゃんに乱暴
にさえぎられた。
「妹友ちゃん、もう行こう」
何でだろう? 妹ちゃんがここまで強い口調であたしのことを遮ることなんてなかったのに。
「すいません。これで失礼します」
とりあえずあたしは儀礼的な言葉を何とかお兄さんに伝えることが出来たのだった。
お兄さんは、こう言っては悪いけど間抜けな返事をした。
「あ、は、はひ!」
女の子たちがクスクス笑いながら、もうお兄さんに背を向けて傘なしで街中に歩きはじめた妹ちゃんの背中を追っていく。あたしは慌ててお兄さんに会釈して、妹ちゃんに傘を差し出しながら足を
速めて小さな妹ちゃんの背中を追いかけた。
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