560:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/01/06(金) 18:29:36.54 ID:Kir/yBk8o
学園祭の翌々日。あたしは登校してすぐに妹ちゃんを見つけ、いつものように妹ちゃんの側に行き一緒に授業前の雑談をしようとした。もちろん今日妹ちゃんに言わなければならないことはあるんだけれど、それは朝一番で話すようなことでもなかったのでとりあえずいつものように妹ちゃんと過ごそうかと思ったのだ。
あたしが自分の席を立ったその時、妹ちゃんがちらりとあたしの方を見た。その時の妹ちゃんの一瞬の表情にあたしはドキッとした。それは妹ちゃんがあたしに対して一度も見せたことのない表情だった。後ろめたいような、それでいて覚悟を決めているようで挑発的ですらある一瞬の表情。
まさか。あたしの脳裏に嫌な思い大雨前の暗雲のように広がっていった。あたしは一昨日お兄さんと付き合い出したばかりだ。昨日は学祭の振替日の休日。お兄さんは大学があったはずで妹ちゃんと何かあったはずはない。それでも、その嫌な感覚はあたしの感情をかき乱した。あたしは妹ちゃんにあいさつし、努めて冷静な声でいつものようにお話をしようとした。でも。
「ごめん、ちょっと用があるから」
妹ちゃんはあたしから目を逸らして呟くように話した。いつも相手の目を真っ直ぐ見る妹ちゃんが・・・・・・。
「あ、そうなんだ。うん。ちょっと話があったんだけど後でいいや」
「・・・・・・話って?」
妹ちゃんは今日はじめてあたしの目を見つめた。
「うん。ちょっとお兄さんのことでお話があるの」
あたしはようやく話すべき内容の口火を切ったが、次の瞬間妹ちゃんは席を立っていた。
「ごめん、用事があるから行くね」
妹ちゃんは教室から小走りに出て行った。これまでこんなことは一度もなかったのだ。あたしは呆然と妹ちゃんが出て行った教室のドアを見つめた。
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