過去ログ - 妹の手を握るまで
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593:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/01/08(日) 00:04:54.63 ID:sCd4xElDo
大晦日の夜、お兄さんは車であたしの家まで迎えに来てくれた。門のチャイムを押してもらってもよかったんだけど、お兄さんには気が重いだろうと思ったあたしは外の音に気をつけていた。事前
に妹ちゃんから電話を貰っていたおかげで、だいたいお兄さんたちが到着する時間は想像がついていた。電話といえば妹ちゃんとの関係も修復されたみたいだった。
今日の予定を決めるための電話も妹ちゃんと普通に親友同士の会話もできたし、さっきの電話だって昔どおりの親しさだった。妹ちゃん、あたしだけ晴れ着なんてずるいって言ってたっけ。

何もかもがうまく行き始めていた。あたしの大好きな彼氏。彼氏の妹で親友の妹ちゃん。あたしはこれからこの二人と一緒に新年のスタートを切るのだ。

お兄さんの車(正確にはお兄さんたちのお父さんの車)のエンジンの音を聞きつけたあたしは家の門から路上に出た。吐く息が真っ白なくらい寒い夜だった。
・・・・・・え? あたしはほんの一瞬だけ固まった。当然、お兄さんの隣の助手席はあたしのために空けてあるだろうと思い込んでいたから。でも、お兄さんの隣には妹ちゃんが座っていた。
綺麗な黒髪、華奢な体格、整った顔立ち。久しぶりに近くで見る妹ちゃんは本当にきれいだった。

一瞬、妹ちゃんに嫉妬したけど、妹ちゃんの慌てたような言葉にあたしは苦笑し心が軽くなった。

「・・・・・・あ」
妹ちゃんは本心で困惑したように呟いた。

「どうした、妹」
「どうしたの? 妹ちゃん」
お兄さんとあたしは同時に言った。

「・・・・・・ごめん」
すごくしょげた様子で妹ちゃんが小さく言った。一瞬妹ちゃんが好きだった頃の思い出があたしの脳裏をよぎった。それくらい可愛い表情だった。

「ごめんね。深く考えないでお兄ちゃんの隣に座っちゃった」

「何言ってるの。そんなこと、あんまり気にしないでよ」
あたしは本心から言った。

「今、後ろに移るから。妹友ちゃん、助手席に座って」
慌てて腰を浮かした妹ちゃんにあたしは精一杯の優しさを込めて返事した。

「いいよ。あたしは後ろの席に座るから、妹ちゃんはそのまま座ってて」

「・・・・・・でも」

「はい、もうこの話はおしまい。お兄さん、渋滞すると思いますから早く行きましょう」

「お、おう」
何故かお兄さんはあからさまにほっとした表情で車を出した。


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