過去ログ - 妹の手を握るまで
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647:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/01/09(月) 23:33:18.14 ID:8CpsmRrMo
その頃、妹ちゃんは同学年の見た目が華やかな女の子たちのグループから声がかかっていたみたいだった。あまり成績のいい子はいないけど、同級生の男の子たちからはよく声がかかるような子たち。でも、彼女たちはよほどイケメンと評判な同学年の男の子は別として、もっと遊び慣れている上級生の男たちとカラオケに行ったりゲーセンに行ったりしていた。
そんなグループから妹ちゃんは声を掛けられたのだった。

そしてそんなグループの中にいるのにはひどく違和感があったのに、普段からその子たちと一緒に行動していたのが妹ちゃんだった。
あたしは同じクラスだった妹ちゃんとは既に知り合いだったけど、それほど親しいというわけでもなかった。何せその頃のあたしは妹友ちゃんとべったり一緒に過ごしていたのだから。
でも、時たま妹ちゃんと話すこともあってその度にあたしはこの子は何を考えているんだろうと不思議に思っていた。

妹友ちゃんと同じく妹ちゃんも男の子の話は全くといっていいほどしなかった。そんな彼女が何であんな男の子と遊びまわっているグループの子たちと一緒に行動しているのかあたしには不思議だった。妹ちゃんは好きな男の話はしないけど、かといって彼女は妹友ちゃんのように同性を恋愛対象にしている様子もなく、また幼すぎて恋愛を意識していないようにも思えなかった。

なぜかと言えば、妹ちゃんはすごく大人びた雰囲気を醸し出していたのだ。あたしも同世代の女の子よりよほど大人の考えを持っているつもりだったけど、それでも妹ちゃんと話し込むと彼女がいかにしっかりと自分を見つめていて、固い意志を持っているのかを思い知らされた。

それはグループの子たちも感じていたようで、彼女たちの判断基準である男の子と付き合った経験が全くないらしい妹ちゃんにはすごく遠慮して気を遣っているようだった。何か不思議に人を引きつける、大げさに言えばミステリアスな雰囲気の女の子。それがあたしが当時妹ちゃんに抱いていた印象だった。

そんな彼女だけど、唯一楽しそうにリラックスして話してくれる話題は彼女のお兄さんの話だった。妹ちゃんが語るお兄さんは頭はいいけどオタク、もっと言えばキモヲタそのものだった。
大学に入ってからも両親が留守がちな妹ちゃんの実家を省みず、部屋に篭って何やらひどく時間のかかるゲームに熱中しているらしい。

妹ちゃんが繰り返しお兄さんの話ばかりするせいで、次第に周囲の子たちは面白がって妹ちゃんのことをブラコンと呼び始めた。妹ちゃんは顔を赤くすることもなく、静かにそうじゃないよと反論してたけど。

でも。あたしには、なんとなく妹ちゃんはお兄さんのことを本気で男性として好きなんじゃないかという気持ちが沸き起こっていた。世間的にはマイノリティだけど、妹友ちゃんの同性愛じゃないけど、あたしたちの身の回りにそういうことが全くないとは言えないし。

何より、お兄さんの話をする妹ちゃんの幸せそうな表情があたしの脳裏に住み着いてしまった。それは世間的には不幸な恋かもしれないけど、あたしも実ることがない想いを抱えていたせいか妹ちゃんに素直に共感できたのだ。もちろん、このことは妹ちゃん本人にも誰にも話さなかったけど。

あたしは妹ちゃんの話すお兄さんのエピソードを聞くのが楽しみだった。別にお兄さん本人には興味はないけど謎が多い妹ちゃんの本心の一部がお兄さんの話を通して少しだけ理解できるような気がしたから。

そんな時、あたしは再び妹友ちゃんに屋上に呼び出されたのだった。


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