過去ログ - 妹の手を握るまで
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692:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/01/12(木) 21:43:53.31 ID:X+RsRxlyo
あたしの感情は振るえ、そして揺れ混乱した。あたしは必死になって最善の道を模索しようとした。
奇麗事だけではなかった。あたしがしようと考えていることは、あたしが半ば諦めていた幼馴染のあいつを自分に振り向かせることだった。
それはあたしの腕の中で泣きながら震えている妹ちゃんが真に救われる道でもあったけど、正直に言うとやはりその一番の動機は自分自身のためだった。

あたしは長い片想いをもはや宿命のように受け入れていたけど、妹友ちゃんの無節操な恋心や妹ちゃんのお兄さんへの一途な恋によってあたしにも道が開けたのだ。
でも、これを成就させるには妹ちゃんに全てではなくてもある程度の真実を話す必要があった。
正直、この頃には妹友ちゃんへの友情は薄れていたけれど、それでも今まで秘密にしていた彼女の性癖を妹ちゃんに話すのはためらわれた。なにしろ妹ちゃんは現在もその性癖の対象なのだから。

あたしは意を決した。そしてあたしに自分の全てを告白してくれ、まだ身を震わせ泣いている妹ちゃんに話しかけた。

「あのさ」
妹ちゃんは無言のまま涙が残る瞳であたしを見上げた。

「今まで黙っていたけど。あたしもさ、実は彼氏先輩のことが好き」
あたしは思い切って告白した。長年抱いててきた本心を白状するのは妹友ちゃんに告白されて断る時に続いて人生で二度目だった。

妹友ちゃんは少し不思議そうな表情であたしを見上げた。

「知ってるよ?」

「え? 何で妹ちゃんが」
気が付かれていたのだろうか? あたしは少し動揺した。

「だってずいぶん前に妹友ちゃんが話してくれたし・・・・・・あたし、あの時妹友ちゃんにも悪いことしたなって思ったんだけど、それ以上に委員長ちゃんには罪悪感を感じていて」

「ちょっと待って」
あたしは妹ちゃんの言葉を遮った。

「本当に妹友ちゃんから聞いたの?」

「うん」
何を言っているのだろうという表情で妹ちゃんは言った。

・・・・・・あの女。あたしは怒りに震えた。あたしはあの子の同性愛嗜好とか妹ちゃんを好きになったという秘密は全て自分の胸の内に収めてきた。妹友ちゃんの自己中心的な性格に辟易して距離を置
いてからだって彼女の秘密を誰にも言う気はなかったのだ。
それなのに。妹友ちゃんはあっさりと噂話の種にあたしの知られたくない秘密をペラペラ喋っていたと言うのだろうか。
まだ少し迷いの残っていたあたしの気持ちはこれで瞬時に固まった。

「妹ちゃん、本当に言いにくいんだけどさ」
あたしはまだあたしの腕の中にいる妹ちゃんに話し出した。

「妹友ちゃんはあんたのお兄さんのこと全然好きじゃないと思うよ」
妹ちゃんの身体が一瞬震えた。それから怖いほど深い色をたたえた彼女の瞳があたしに向けられた。


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