801:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/01/17(火) 22:27:57.04 ID:IpfYatZ3o
お兄ちゃんがお風呂から出て自分の夕食をトレイに乗せて自分の部屋に戻ってしまってからは、あたしは毎晩手持ち無沙汰だった。高校生になった時あたしが友人から無口だねとかって言われたりすることになるのもこの頃一人で過ごしていた夜の影響かもしれない。一人で喋るわけには行かなかったから、あたしは広いリビングでぽつんとソファに座って毎晩テレビを見た。
毎晩それを続けていたせいであたしはテレビ中毒みたいになってしまった。見ていて決して面白いわけではないんだけど、静かな部屋に耐え切れない気持ちもあった。
小学校も高学年になると男の子の噂をする子たちが増えてきて、あたしも、誰か好きな子いるの? と友だちに聞かれることがあった。そのたびに、よくわかんないとかいないよとか返事をしていたのだけど、そのうちにそう聞かれるたびにお兄ちゃんの制服姿が思い浮かぶようになって来た。
最初は自宅では一人きりなので寂しいのだろうと思っていた。寂しいから唯一同じ家の中にいるお兄ちゃんのことを恋しく思うのだろうと。
たまに両親が家で過ごす晩をあたしはすごく楽しみにしていたのだけど、お兄ちゃんは両親がそろっている時でも自室で過ごすのを止めようとはしなかった。
両親が揃ったリビングで久しぶりに声を出して会話をする楽しみも、そのうちに何だかそんなに楽しく思えなくなってきた。
せっかく久しぶりに家族が一緒に過ごしているのに何でお兄ちゃんはリビングにいてくれないんだろう。
その頃になると夜自宅でいる時だけではなく、昼間学校で過ごしている時もお兄ちゃんの姿が胸の中に現れるようになっていた。
優しくもなく特に格好よくもないお兄ちゃん
普段ろくに口をきいてくれないお兄ちゃん
あたしはこの頃ようやくお兄ちゃんへの恋を自覚したのだった。
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