817:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/01/18(水) 22:07:43.11 ID:/yleCiHto
次にあたしがお兄ちゃんの気まぐれな好意に悩まされたのは、その翌日だった。
その日は突然に雨が振り出して、傘を持っていなかったあたしは妹友ちゃんの傘に入れてもらいながら校舎を出て街中に向かっていた。
・・・・・お兄ちゃんが校門の前に車を止めて待っているのを見つけた時。
その時はあたしのこれまでの人生で一番幸福ででも心が混乱し自分がどう行動しているのか何を喋っているのかその時には全くわからないほど、頭の中が真っ白に輝いてあたしの思考は停止していた。
「窓あけて」
あたしは夢遊病者のようにお兄ちゃんの車のフロントガラスを叩いていた。
「お兄ちゃん、ここで何してるの」
あたしの口から勝手に周りの子たち、彼氏とも仲のいい子たちに配慮した言葉が口から出ていた。
「へ? 何っておまえを迎えに」
お兄ちゃんは言った。
「キャー。妹いいなあ。車でお迎えが来るんだあ」
ただでさえ真っ白なあたしの頭を混乱させる無責任な女の子たちのからかう声。
「何でわざわざ校門の前の目立つところで車止めてるの? っていうかあたし迎えなんて頼んでないよね」
あたしは何を言っているのだろう。落ち着いてありがとうお兄ちゃんって微笑んで、助手席に入りさえすればいいのに。
「母さんが迎えに行けって。おまえ、母さんからメール来てねえの」
「知らない、そんなこと。いいから帰ってよ」
「だっておまえ傘」
「友達に入れてもらってるから大丈夫。早くここからいなくなって、お願いだから」
お兄ちゃんは黙ってしまった。
17年間生きてきて初めてのお兄ちゃんのお迎え。
17年間生きてきて初めてお兄ちゃんと二人きりのドライブ。
何であたしは素直にお兄ちゃんの車に乗り込めないのだろう
「妹ちゃん、浮気?」「修羅場か?」「彼氏先輩に言いつけちゃうよ」「きゃははははは」
再び面白がっているでも悪気のない嬌声が聞こえて来る。
もう駄目だ。ここまで最悪な態度を示してしまった以上、これからいそいそとお兄ちゃんの車の助手席に乗り込むわけには行かなかった。
17年間で初めて訪れたお兄ちゃんと親しくなるチャンスをあたしは自分で潰してしまったのだ。
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