過去ログ - 妹の手を握るまで
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845:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/01/20(金) 21:40:03.87 ID:Ohn7E77eo
その夜、あたしは先輩と過ごしながらずっとお兄ちゃんのことを考えていた。

お兄ちゃんがあたしと彼との仲を心配してくれた。お兄ちゃんを恋する立場から言えばそれは最悪な出来事だと思うのが普通だ。好きな人があたしの恋愛を応援するということは逆に言えばあたし
に恋愛感情がないということ。お兄ちゃんはあたしの彼に嫉妬したのではない。

だけど、彼との仲をお兄ちゃんが心配するということだけでもあたしにとってはすごく嬉しい進歩だった。今までお兄ちゃんはあたしに全く関心がなかったのだから。
あたしはお兄ちゃんの態度について考えることに一生懸命没頭していたせいで、先輩を置き去りにしたようだった。

「・・・・・・俺の話聞いてるの? おまえ」
先輩は途中で話をやめ、面白くなさそうに言った。今夜は二人きりだったせいで、周囲の取り巻きにいいところを見せる必要がないので、先輩も敢えて乱暴な態度を示すことはなかった。

「ちょっと考えごとしてた。ごめんね」
あたしは答えた。

「まあ、おまえが他の男と遊びに行ったんじゃねえことはわかったよ」
先輩は気を取り直して話を続けた。

「おまえの兄貴が病気で家には誰もいないってこともわかったけどよ」

「うん」

「・・・・・・やっぱり、それって浮気の一種なんじゃねえの」
先輩は少し寂びそうに言った。

「だから他の男の人とは会ってないよ」
あたしは少しイライラして答えた。何度同じ話を蒸し返すつもりなんだろう。

「だから、そうじゃなくてよ。おまえが兄貴と一緒にいたいっていう気持ちが、精神的な浮気なんじゃねえのか」
先輩はそう言いながらも少しも怒っている様子ではなかった。
あたしは反論しようとしたけど、できなかった。

・・・・・・先輩の言うとおりだと自分にもわかっていたから。

「じゃあ、今日は帰るか」
先輩はレシートを掴んで席を立った。

「え?」

「送ってくよ。兄貴のことが心配なんだろ」
先輩は静かに言った。決して怒っている風でもなく、ただ少し寂しげに。


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