846:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/01/20(金) 21:43:05.23 ID:Ohn7E77eo
11時過ぎ、家の前まで送ってくれた先輩にさよならのキスをした(それはいつもの習慣だった)あたしは、家に入ると真っ先にお兄ちゃんの部屋に向かった。
部屋は明かりは既に落ちており、お兄ちゃんは寝ているようだった。
あたしはとりあえずお兄ちゃんの熱が下がったか調べようと、寝ているお兄ちゃんの額に手を当てた。
・・・・・・少し下がったようだけど相変わらず熱は下がりきっていないようだ。
その時お兄ちゃんが身じろぎした。
「おかえり」
お兄ちゃんが寝ているものと思い込んでいたあたしは思わず小さく悲鳴を上げた。
「どした?」
お兄ちゃんが落ち着いた声でたずねた。
「おきてたの? お兄ちゃん」
まだドキドキしている胸を必死で静めながらあたしは聞いた。
「おまえの手が冷たくておきた」
「熱さがったかなって思って。ごめん」
「何でそこで謝る」
お兄ちゃんが言った。
「おこしちゃったから。じゃあ、おやすみ」
あたしがお兄ちゃんの部屋を出ようとしたその時だった。
「・・・・・・どうだった」
「? 何が?」
「彼氏と仲直りできたのか?」
お兄ちゃんはやっぱりあたしのことを心配してくれている。気にかけてくれている。
ひょっとしたらさっきの優しさは気まぐれなんじゃないかとも思ったけど、あたしの帰宅直後にそう聞いてくれるほど、あたしのことを考えていてくれたのだ。
繰り返すようだけどそれはもちろんあたしへの恋愛的な意味ではなく兄妹的な優しさだ。
でも、それだけでもあたしはすごく嬉しかった。
「あ、悪い。余計なこと聞いたわ。今の忘れていいよ」
お兄ちゃんは慌てたように言い繕ったけど、あたしは構わず答えた。
「お兄ちゃんが病気だってことは信じてもらえた」
「・・・・・・そう。よかったな」
お兄ちゃんはぼそっと言った。
「でも、浮気じゃないってことは信じてもらえなかった」
「はぁ?」
「精神的な浮気じゃないかって」
「・・・・・・俺にはよくわからん。結局仲直りしたの? しなかったの?」
「よくわかんない」
・・・・・・実際にはすごくよく理解できていたのだけど、それはお兄ちゃんにだけは話せないことだった。
「そうか」
考えるのを諦めたようにお兄ちゃんが言った。
「・・・・・・おかゆ、食べてないね。まだ食べられない?」
あたしはおかゆが手付かずのまま残されているのを見て尋ねた。
「そのままにしといて。後で食べるから」
もちろんこんな冷めたおかゆをお兄ちゃんに食べさせるわけにはいかない。
「冷めちゃったから片付けるね。お腹空いたらまた作るから」
あたしはおかゆの乗ったトレイを片付けようとした。
「こんな時間だからもう寝たら? 明日は学校行くんだろ」
お兄ちゃんが言った。
「だって・・・・・・」
あたしはお兄ちゃんの風邪が治るまではずっとお兄ちゃんの看病をするつもりだった。
「俺は平気だから。熱も下がってきたし」
あたしは落胆のあまり泣きそうだったけど、病気のお兄ちゃん相手にわがままを言うわけにもいかなかった。
「わかった。じゃあ、おやすみ」
「ああ」
お兄ちゃんは短く答えると再び目をつぶった。
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