過去ログ - 妹の手を握るまで
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869:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/01/21(土) 21:28:52.62 ID:Fm8w6/Rho
その時、教室の反対側で作業をしていたはずの妹友ちゃんがあたしの方を見つめていることに気がついた。
あたしが妹友ちゃんの視線に気がついたのを知って、彼女はあたしの側に寄ってきた。

「妹ちゃん、何かまずい電話だった?」

「え? 何で」
あたしは冷静を装って答えた。

「だって、真っ赤になってすごく慌ててる様子だったし。いつも落ち着いている妹ちゃんらしくないもん」
妹友ちゃんは言った。

「あたし慌ててないよ?」
あたしは反論した。

「慌ててたよ」
妹友ちゃんも譲らなかった。

「お家からの電話? もしかしてお兄さん具合良くないの?」
その時の妹友ちゃんの顔には、お兄ちゃんの具合を真剣に心配している表情が浮かんでいた。
それであたしもさっきの電話のことを適当に誤魔化すことが出来なくなってしまった。

「違うよ。お母さんから電話で今日結構雨降ってるからお兄ちゃんが車で迎えにくるんだって」
あたしは冷静に見えるように努めながら言った。

「あ、そうなんだ。お兄さんもうよくなったんだね」
妹友ちゃんは安心した様子で言った。

「うん。ありがとね、妹友ちゃん」
あたしは心底からお礼を言った。彼女がお兄ちゃんを心配してくれているのは本当だろうから。
でも、妹友ちゃんの次の言葉を聞いてあたしはまた憂鬱になった。こんなことを考えるのは妹友ちゃんには悪いのだけれど。

「雨かあ。そういや今朝降ってなかったから傘忘れちゃったな」
あたしと妹友ちゃんはどちらか一方が傘を忘れてきた時は、一つの傘に入って一緒に帰る仲だった。遠回りになっても傘を持っている方が持っていない方の自宅まで送る。

あたしは内心溜息をついたけど、これは迷うまでもないことだった。

「妹友ちゃんも一緒にお兄ちゃんの車に乗って行きなよ」
あたしは言った。

「もう仕事終わるんでしょ」

「でも、いいの?」
妹友ちゃんは遠慮している様子だった。

「別にいいよ」
あたしは答えた。

「妹友ちゃんの家って帰る途中じゃん」

「ありがとう。じゃあお言葉に甘えるね」
妹友ちゃんはそう言って学園祭のポスター作成作業に戻っていった。あたしは気を取り直してお母さんに電話した。
乗ったことはないけど、お兄ちゃんの軽自動車は後部座席がすごく狭そうだった。そんなところに妹友ちゃんを座らせるのも可哀想だし。
あたしはお母さんに、お兄ちゃんがお父さんの車で来てくれるように頼んだ。


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