過去ログ - 妹の手を握るまで
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879:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/01/21(土) 23:13:38.40 ID:Fm8w6/Rho
・・・・・・その後、妹友ちゃんの家に着くまでは主に妹友ちゃんがお兄ちゃんに話しかけ(というよりはお兄ちゃんのことを一方的にほめたて)、お兄ちゃんがそれに答えるという会話がずっと続いた。あたしはほとんど口を出さずに2人の会話を聞いていたけれど、妹友ちゃんのどこまで本気かわからない好意に応えるお兄ちゃんの本心もよくわからなかった。戸惑っているようでもあり軽くいなしているようでもあり。

やがて車が妹友ちゃんの家に着くと、妹友ちゃんは丁寧にお兄ちゃんにお礼を言いあたしにはまた明日ねと声をかけて家の中に入って行った。
ほとんど一人で喋っていた妹友ちゃんがいなくなると、急に車内は沈黙に包まれた。

「あ、あのさ」
お兄ちゃんがあたしに話しかけたその時、あたしの携帯が鳴り響いた。

「お母さんだ」
あたしは携帯を耳に当てた。

『お母さんだけど、あんた今どこにいるの』
お母さんのさっきののんびりとした口調と違う声が響いた。仕事モードのお母さんの声だ。
それはいつもこの類の電話を受けてきたあたしにはすぐわかった。
もしかして・・・・・・あたしは思わず少し期待した。

「うん、今車の中。帰るとこ」

『悪いんだけどさ、職場から呼び出されたから仕事行ってくるね』
お母さんは慌しく喋った。

「仕事って今から? お父さんは?」
念のために確認しておかないと

『言わなかったっけ? お父さんは来週まで香港にいるの』
お母さんのもどかしそうな声。お母さんがこの声を出す時はいつだって早く電話を切りたがっているのだ。
早く自分を待っている仕事上の困難な課題に立ち向かいたいのだろう。

『だから悪いけどあんたたち家に変える途中で、ファミレスかどっかに寄って食事して来ちゃって。今夜は遅くなっても許してあげるから。お金は持ってる?』

「うん。別にいいけど・・・・・・ちょっと待って」

「お兄ちゃん」
あたしはお兄ちゃんに話しかけた。

「どうした」

「お母さん、会社に呼び出されたんで仕事に行くって」

「今からかよ」
お兄ちゃんはちょっと顔をしかめた。お兄ちゃんはお母さんのことが好きで、いつも仕事漬けになっているお母さんを心配していた。
お兄ちゃんは認めないだろうけど、ずっとお兄ちゃんを見つめてきたあたしにはわかっていた。そのことでお母さんに大して無意味な嫉妬をしたことさえあったのだ。

「お父さんも今日帰れないんで、どっかで食事してきてって」

「・・・・・・うん」

「あたしあまりお金持ってないけど、お兄ちゃんは?」

「あるけど」

あたしは再びお母さんに話しかけた。

「お母さん? ごめん。お兄ちゃんお金あるって。うん、うん。わかった。じゃあね」
あたしは早く会社に行きたがっているお母さんをあたしとの会話から解放してあげた。


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