過去ログ - 妹の手を握るまで
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901:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/01/22(日) 22:41:23.17 ID:1Eq+XbUTo
その夜、あたしはおにいちゃんの部屋でテレビを見ていたのだけど内容は全く頭に入っていなかった。あたしはすぐ近くの床に座っているお兄ちゃんのことがずっと気になっていたのだ。
それにあたしの方を何気なくちらちら見ているお兄ちゃんの視線にも気を取られていた。


突然お兄ちゃんが話しかけた。

「おまえさ、何か香水みたいのつけてる?」

「香りが気になるならら、メーク落としてこようか」
お兄ちゃんに不快な思いをさせていたんだろうか。あたしは一瞬どきっとした。

「別に、気にならない。つうかいい匂い」
お兄ちゃんが言った。

「うん」
平静を装って答えたけどあたしはお兄ちゃんの言葉にどきどきして、それ以上何を話していいのかわからなかった。
それは、妹を心配している兄いちゃんが妹にかける言葉じゃなくて、まるで自分の彼女にかけるような優しい言葉だった。
そのことを考えて心を乱しているあたしに更にお兄ちゃんは追い討ちをかけた。

お兄ちゃんはあたしの服装をお洒落だと誉めたのだ。


期待してはだめ。結局傷つくのは自分なんだから。あたしは自分に言い聞かせたけど、お兄ちゃんがあたしにかけてくれた言葉は無視するには大きすぎた。
もしかしたら・・・・・・お兄ちゃんもあたしのことを。

急に緊張が解けた。さっきあたしに心配だと言ってくれた時に感じた以上の自由な感じ。いろいろとあたしが自分で自分を縛っていたものが突然消えたようだった。
勘違いをしているのかもしれないけど、もう傷つくのを恐れてもしょうがない。そう考えるとあたしの心は落ち着きを取り戻した。そして心の奥には落ち着きだけでなくやはり高揚感が少し潜んでいるようだった。

あたしは、お兄ちゃんがあたしの服装が気になるなら着替えてこようかとお兄ちゃんに聞いた。

「・・・・・・おまえ、そんなしおらしいキャラだっけ」
お兄ちゃんは面食らった様子で言った。

あたしは黙ってお兄ちゃんに微笑んだ。

「お兄ちゃん」

「うん?」

「ちょっと寒い」

「そう? エアコンつける?」

「うん」

お兄ちゃんはエアコンを付け、そしてベッドに座っているあたしに毛布をかけてくれた。

「部屋が暖まるまでベッドの毛布でもかぶっとけ」

「わかった。お兄ちゃんも入る?」
あたしは自然に言った。そしてあたしの隣に来るようにお兄ちゃんの手を引っ張った。


・・・・・・毛布の中でお兄ちゃんの身体が密着している。
あたしたちは黙って毛布の下で寄り添いながらテレビを眺めた。17年間もお互いのそばにいたことがなかったあたしたちだけど、こうして寄り添うと何か自然だった。


その時お兄ちゃんの携帯が振動してメールの着信を告げた。


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