過去ログ - 土御門「忘れたかにゃー、インデックス。オレって実は天邪鬼なんだぜい」
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141: ◆sk/InHcLP.[saga sage]
2012/02/14(火) 04:08:41.52 ID:bswlQR1P0

土御門が次に取った行動は実にシンプルだった。相手の髪を掴んだまま、その頭を壁方向へ叩き付ける。ただ左腕を右の壁の方に叩き付ける。
たったそれだけの行動だった。幾度もの猛攻でステイル自身抵抗もしなかったので、土御門も簡単に彼の頭を、存分にその物体に叩き付けた。
ただし。



ステイル=マグヌスの赤い頭は、ドアに備え付けられている金属の突起物に激突してはいたが。


「あ、ああああ……っ」


痛み。苦しみ。その手のプロによる犯行に対し、同じくプロのステイルも動揺してしまう。頭の中が真っ白になり、思考がゼロになる。
代わりに彼の頭の中を支配するのは、感覚。視覚は、恐怖を煽る敵の姿を。聴覚は、生々しい音の響きを。触覚は、内から湧き出る痛みを。
それぞれの感覚器官から脳に伝達される情報が、思考を掻き消していく。そして、恐怖という感情が脳から全身へ駆け巡っていく。


「…………ふん」


情けない呻き声を上げる同僚に、しかし土御門は何の感情も表さない。既に戦意があるかどうかも分からない敵に対し、彼は再び牙をむく。
続いては、頭への衝撃で足元もおぼつかない少年の胸倉を右手で掴み、髪を引っ張っていた左手を放して修道服の裾へと掴み直す。
どうにか向き合おうとして顔を上げたステイル=マグヌスだが、土御門の表情を窺う前に足をかけられ、そのまま変則の大外刈りを決められた。
変則、というより分かり易い反則行為だろう。何せ土御門元春は足を刈って相手を倒す際に、同時に相手に頭突きもしたのだから。
当然ながら、元々意識も不安定だったステイルがこんな技を受けて受け身が取れるはずもなく、床に思い切って頭を叩き付けることになった。


「っ――――――っっ!!」


パシャ、と跳ねたのは水だけだっただろうか。倒れた魔術師の周囲には、彼の特徴的な赤い髪以外にも、同じ色が顕在していたようだった。
もはや声も上げることも満足にできないステイル=マグヌスは、倒れ込んだ身体をプルプルと震わせている。おそらく恐怖の現れではない。


「意志の現れ、か」


フィルター越しに魔術師を見下ろす元天才魔術師が、少しだけ感心したように呟く。これはこれで、大したものだとは思う。
ただ一人の少女を守りたくて、こんな馬鹿なことをしているのだから。たった一人のために、ここまで痛めつけてもまだ動こうとするのだから。
だが彼の行動は、あの女の子を守るという一点に限って言えば、無意味とか無駄とか、そんな言葉しか出てこないほど愚かなものだった。



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