過去ログ - 土御門「忘れたかにゃー、インデックス。オレって実は天邪鬼なんだぜい」
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158: ◆sk/InHcLP.[saga sage]
2012/02/22(水) 00:40:00.88 ID:FR3rivc20

彼女の叫びもむなしく、能力者は魔術を使ってしまった。いや、正確には既に使った後だったので、気づいた時にはもう遅かった。
禁書目録たる彼女は、基本的な魔術ならば世界中すべての術式が見ただけで分かる。これは古代中国を起源とする陰陽系の魔術だ。
色は黒。属性は水。その効果は回復。もしかすると、自分の身体が水浸しになっていたのは、彼が水系の魔術を使ったからなのか。


「そ、そんな…」


しかし、そんな分析など今はどうでもいい。この状況で最も重要なのは、あの能力者が魔術を使ってしまったこと。その一点だった。
インデックスの身体から、あの少年が魔術で作り上げたものではない水が、とめどなく溢れてきた。一度出てきたらもう止まらない。
そうこうしているうちに、少年の口から赤い液体が一筋、ツーっと流れていた。誰がどう見ても、もう彼の身体は限界だった。
出来れば彼の愚行を止めたかった。一度魔術を使ってなお生きていること自体不思議なくらいだからだ。でも身体は動かない。

彼女の懸念をまるで無視して、術は発動する。白い折り紙の四隅に立てられた黒い折り紙4枚が、親指一本分ほど宙に浮く。
しゃがんでその様子を見ていた少年は両手を組んで自身の胸の前に持っていき、主に祈りを捧げる信徒のような格好をとった。
すると、浮かんでいた4枚の黒紙が反時計回りに回り始めた。少女の傷の上に置いてある白紙を中心にして、4枚の紙は回る。
等距離を保ちながらどんどん円周を縮めていった黒い紙の軌跡は、下の紙のちょうど中心で交わり、黒は4つ同時に白に着地した。
ふわりと触れた黒は、接触部から徐々に白い折り紙に溶けていく。白に溶け込んだ黒は紙の中心から四隅へと段々と侵攻していく。
しかしその工程の最中に、十分予想でき得る邪魔が入ってきた。


「……グハッ! ゴホガハッ!!」


モノクロで支配されつつあった領域に、危うく五月蠅い色が加わるところだった。金髪の少年の口から、赤が溢れ出てきたのだ。
彼は、自分の術の邪魔にならないよう……彼の領域を壊さないように、白い少女から顔を背けて路地裏に血をぶち撒ける。
サングラスをかけているため表情が窺えないが、少年はおそらく苦悶の表情を浮かべているのだろう。赤い水が路面に染み込んでいく。


「もう止めて! 私は助からなくても良いから……せめて君は…!」

「ハッ。聞き入れられないにゃー…」

「でも、このままじゃ……!」

「フッ…。誰がが犠牲になって誰かが助かる……良い話ぜ…ガハッ!」


それでも少年は止まらない。白い折り紙は完全に黒に支配されたかと思うと、今度は四隅から中央に向かって白が広がっていった。
色が消えた場所から現れてきたのは、透明な水滴。まるで凝結によって金属の表面に水が生まれたかのように、四隅から液体が生まれた。
新鮮な水は紙から傷口へと流れ込み、赤に触れると水は蒸気へと姿を変えた。その部位から、傷がどんどん治っていくのが分かる。
紙が元の白を取り戻していくほどに、傷口も徐々に塞がっていく。もう一度白い折り紙が登場した頃には、傷は完全に治っていた。


「……治った…?」

「完了……ぜよ。もう…出血で……死ぬこと…は……っ」


どさっ。この音が裏路地の建物に反射してインデックスの耳に入ったときには、少年は血の海にうつ伏せになって倒れていた。



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