過去ログ - 土御門「忘れたかにゃー、インデックス。オレって実は天邪鬼なんだぜい」
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176: ◆sk/InHcLP.[saga sage]
2012/03/12(月) 21:21:02.72 ID:wyrSFD9O0

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その変化を、月詠小萌は感じ取っていた。口調もそうだが、まず何より身に纏っている雰囲気自体が違っていた。
彼女は化学の教師であると同時に心理学の専門家でもあったが、この症状はその専門分野の畑とも何か色が違う。
何というか、ただ二重人格という訳ではなさそうで。まるで、少女に幽霊でもとりついたかのような感じだ。


「……って、そんなこと考えてる場合じゃないですー!」


目の前に自分の生徒が傷つき倒れているのだ。当然、彼女としては黙って見過ごす訳にはいかない。
あの土御門元春という名前の生徒がどこでここまで酷い傷を負ったのかとか、具体的なことは何も分からない。
しかし、現実に彼は命の危機に直面しているのことは確かで、そんな些事を気にする余裕は小萌には無かった。
こうして小萌先生は慌てて部屋の奥から救急箱を取り出そうとしたが、シスターはそんなことを気にも留めない。


「…現状を維持すれば、彼の身体はおよそ15分後に必要最低限の生命力を失い、絶命します」


絶命。この最悪のキーワードが耳の奥底まで響き渡る。言葉の意味を脳で理解した頃には、恐怖が頭を支配していた。
月詠小萌という人間は、生徒との別れというものに極端に弱い。彼らと接しているうちにどうしても入れ込んでしまうのだ。
だが、それはあくまでも卒業という形でのお話。入れ込んだ生徒との死別など、彼女にとっては耐えられるはずもない。
思わずパニックに陥ってしまうところだったが、そうやって貴重な時間を潰す訳にはいかない。


「これから私の行う指示に従って、適切な処置を施していただければ幸い……お願いします」


氷のように冷静な瞳へと目の色を変えたシスターが、言葉を詰まらせて小萌に懇願してきた。正直意外だった。
年頃の女の子らしい振る舞いが鳴りを潜め、別の人格が顔を出したので、そのまま機械的に話してくるものと思っていた。
だが、彼女は途中で使う言葉を変えた。同時にほんの少しだけ揺らいだ瞳は、コップの氷が少しだけ溶ける絵を連想させた。
つまり、こんなに冷静に話してはいるが、その中に少量の人間的な感情も含まれているという訳だ。


「……わかりました」

「…では、今からいくつか質問と指示をします。それにより、彼に処置を施します」

「でも、一体何をするのです?」

「今からそれも説明しますが……。とりあえず、その質問には先に答えておきます」

「えっと、じゃあこれからするのは…?」

「魔術です」


その言葉には、妙に説得力があるように、月詠小萌には思えた。



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