160: ◆tUNoJq4Lwk[saga]
2011/12/18(日) 19:31:48.12 ID:+zrhUEmho
「キミが話をしていた患者さんは、上条恭介くんだよね」
「そうっすけど」
「いや、彼があんな風に誰かとよく喋っている姿を見たのは久しぶりな気がする」
「ん?」
「まあ、一人一人の患者さんをよく観察することはできないんだけど」
「はあ……」
「彼の手のことは、知っているかい?」
「ええと、確か交通事故で片一方が動かなくなったとか」
「そうなんだ」
「それが何か? 治るんでしょう?」
「いや、その……」
若い医師は口ごもる。
「どうしたんっすか」
「いや。彼はねえ、ヴァイオリンの演奏者だったんだよ。それもかなり優秀な」
「……」
「でも事故で手を動かなくなってしまって、弾けなくなってしまったんだ」
「それで、そいつは治るんですか」
「それが」
医師の表情から、その先の言葉は播磨にもだいたい想像できた。
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