322:年末スペシャル ◆tUNoJq4Lwk[saga]
2011/12/25(日) 20:28:06.90 ID:GEEMDRZko
播磨は意味がわからず、黙っているようだ。
澪も、一瞬意味が分からなかった。
「ほら、こうして」
そう言うと唯はカスタネットのゴムを指にはめる。
「うんたん、うんたん、うんたん、うんたん、うんたん」
そして、身体でリズムを取りながら軽快にカスタネットを鳴らした。
「あ、そうか……」
不意に、澪は気付く。
「どうした、秋山」と、播磨。
「リズムだ」
「ん?」
「なんで、今まで上手くいかなかったのかわかった気がする」
「どうして……」
「あの、播磨くん。お願いがあるんだけど」
「なんだ」
「私がリズムをとるから、それに合わせてほしい。私のリズムに」
「ん? ああ」
澪は今まで、播磨に合わそうとして必死になってきた。
だから上手くいかなかったのだ。
彼女は自分のバンドを思い出す。
(私の楽器はベース。ベースは文字通り、音の土台を作り出すもの。律のドラムと同じように、
自分で音楽を作らなきゃ)
澪は大きく息を吸い、一歩足を踏み出す。
「いっち! にっ! いっち! にっ!」
先ほどようりも力強く、自信を持って。
澪の足に合わせるように、播磨も進む。
今度は驚くほど歩調が合う。
まるで楽器のセッションをしているような感覚だ。
「ペース上をげる」
「おう! いいぜ」
「いちに、いちに、いちに、いちに……」
一度交わった波長は、なかなか止まらない。たとえスピードが速くても、狂うことがない。
その日、澪と播磨は遅くまで二人三脚の練習をしたのだった。
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