427: ◆tUNoJq4Lwk[saga]
2011/12/30(金) 18:37:59.72 ID:1r0Rv1RGo
「わりと、付き合ってみるとその人の良さが見えることもあるのよ」
「その人の良さ……」
「そうよ。人と人との信頼関係っていうのは、相手のことを誤解していたり、
何を考えているのかわからなかったりしたら、そこで崩れていってしまうものなの。
でも、相手のことをよく知っていれば、安易に恨んだりはしないものよ」
「……そうですか」
「別に人に限ったことでもないわ。たとえば勉強だと、苦手だなとか難しそうだなと思った分野でも、
実際に調べてみると結構面白いと感じてみたり」
「勉強のほうがちょっと」
「それは自分で調べようとしないからよ」
「自分で?」
「そう、人から与えられたものを食べたって仕方ないわ。自分で掴み取るからこと尊いのよ、
拳児くん」
そう言って詢子は、ネタのトロを一口で食べた。
「うん、おいしい。拳児くんも食べたら」
「あ、はい」
詢子に言われ、播磨も目の前にある寿司を食べる。
確かにうまい。月並みな表現だが、「舌の上でとろける」という感覚を初めて感じた。
それでいて、しっかりと口の中にうまみが残っており、寿司飯と一緒に何とも言えない
至福感が全身を走る。
「こんな美味い寿司、初めて食ったかも」
「当たり前だよ。だってここは、私のお気に入りの店だからね」
「……」
「ただ単に美味いだけじゃないよ。ここの大将は私の好みをよく知っていてくれるからね。
ちょっと大げさだけど、“私だけの味”を提供してくれるのさ」
「……はあ」
702Res/519.76 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。