511: ◆tUNoJq4Lwk[saga]
2012/01/06(金) 19:36:21.39 ID:9e1wVLifo
重苦しい空気が街を包む。
一週間前から気象庁はこの地域の梅雨入りを宣言した。
昼間になっても暗い空を見れば、憂鬱な気分はさらに暗くなるだろう。
鹿目まどかは親友を亡くし、その前には尊敬する先輩を亡くした。
中学二年生という幼い少女の心に、この突然の別れは、季節の影響もあってかなり
重くのしかかっているであろうことは想像に難くない。
和子の話では、学校も休みがちになっているという。
播磨拳児は、そんな彼女に対してどう接していいのかわからなかった。
ただ、まどかに元気になってもらいたい。
そう思い、彼は筆を執る。
(今、俺にできることは漫画を描くことくらいだ)
自分を慰めるように、彼は無心で漫画用原稿用紙に向かう。
*
それから数日後、播磨は学校をさぼって東京の文京区にある談講社に出向いていた。
描いた漫画の原稿を、以前会ったことのある編集者に見せるためである。
しかしこの日は急用が入ったのか、目当ての編集はなかなか現れない。
小一時間待たされ、いい加減イライラしてきたところでやっとワイシャツ姿の編集者が姿を現した。
「待たせてゴメンネ田沢君」
黒髪の見た目は真面目そうな編集者は、入ってくるなり合掌して謝る。
しかし名前を間違えている辺り、本気で謝る気があるのか疑問である。
「いや、別にいいんっすけど、何かあったんっすか」
「じ、実は編集長が直接キミと会いたいって言うんだよ……」
「編集長……」
*
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