過去ログ - 闇霊使いダルク「恋人か……」 U
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418: ◆7wX5w4kzRc[saga]
2012/09/30(日) 16:00:23.26 ID:TkcSa2m1o
『G・コザッキー』の底部のキャタピラが、ギュルギュルと土砂をほじくり返す音。
これ以上前進できないことに不満を上げるような、くぐもった機械音。
ツギハギ装甲が、真正面からの抵抗によってミシミシと軋んでいく音。
それらが一斉に不調和に合唱され、一帯はただならぬ喧騒に包まれた。
「進めええぇ! 進まん!! 何なのだああぁ!?」
ギコが飛び出していた。
先ほどまで遠い地点にいたはずのギコが、いつ間にか脱兎のごとく駆け出し――
今まさに巨大マシーンがダルクとエリアを轢き倒さんとする間際、我が身を盾に進撃を止めたのだった。
両手を限界まで広げ、足を大きく股開き、首まで使って真正面から受け止めている。
長いしっぽは力強く背後の地面に埋め込まれ、ちょうど三本足で体躯を支えているような体勢だ。
しかし完全に押さえ込めているわけではなく、その両足としっぽは徐々に地面に引きずりの跡を作っていく。
見るからに長くはもちそうにない。
「ギコ」
ダルクは、少なくともギコが自分達を助ける形で現れたことを知るや、すぐさま次の行動に移った。
マシーンの動きが止まっている以上、進路方向から真横に逃れるくらいの余裕は十分ある。
ダルクは自分の肩を貸すようにエリアを持ち上げ、ぎこちない動きながら5秒とかからず窮地を脱した。
ギコは果たしてそれを見届けたのか、ゆっくり腕力を抜いていった。
当然ずるずる後方に押し流されるが、その分生じた余力を使い、直後真上に飛び跳ねた。
「うおおおおおっ!?」
力任せで押し進もうとした『G・コザッキー』は、突然障害が消えたことに対応できない。
高出力のエンジンの勢いそのままに、あれよという間に湖に突っ込んだ。
あわれ鋼の巨体は、盛大に水しぶきをあげながら湖の奥底へ沈没して――
「たまるかあああぁぁぁ!!」
操縦席のコザッキーは、湖の縁ギリギリで一瞬早くボタンを押していた。
仰々しく『No Entry!!』と記されたボタンを。
「くぬおおおぉぉぉ!」
ボタンはただちに機能し、『G・コザッキー』は全ての動力を緊急停止に注いだ。
するとこれまでの勢いからは考えられない減速力を見せ、その巨体はコンマ数秒の間に完全に固まった。
急激なブレーキは功を奏し、なんとか湖へのダイブは免れる。
だが、もはや車体の三分の一は湖にはみ出しており、今にも落ちそうなほど前のめりになっている。
「でぇい!」
コザッキーは小さなレバーを2、3、弾くと、つかんだ操縦桿を大きく横へ回した。
途端『G・コザッキー』の上体部がうなりととも180度回転し、重心の移動によって機体の姿勢が安定した。
また湖に背を向ける体勢になったことで、自然、ダルク達の方へ向き直る形になる。
そこで初めて、コザッキーはこの場にいる面々の姿を把握した。
「んんん? なんだお前たちは……んん!? お、お前は!!」
前傾姿勢で臨戦の構えを取っているガガギゴを見つけるや、コザッキーはみるみる喜色満面となった。
「被験体350300! お前の方から来てくれたか! よしよしいい子だ! うぐひひひひ」
(被験体……?)
眉をしかめるダルク。
ということはやはり、このドクター・コザッキーが、ギコをこの姿に変えた張本人――。
「さぁ、私のところへ戻ってくるのだ。今よりも強力な、更なる力を与えてやるぞ……」
コザッキーの甘やかな口調がスピーカーから流れ、C字のアームが抱擁を求めるように広げられる。
だがギコは一際不機嫌な声を上げると、ばちんと尾を地面に叩きつけた。
その赤い瞳は鋭く細められ、上から見下ろす科学者を射殺すように睨みすえている。
当然だ。さきほどこのマシーンは、エリアを押しつぶそうとした。
誰にもはっきり目に分かるような形で、危機に晒した。
その所業はギコにとって、ダルクさえ差し置いてでも決して許しておけるものではなかった。
「ふむ、何か気に障ったのか? ぐひひひ、では仕方あるまい……」
一対のC字アーム、ドリルアーム、ハンマーアームがそれぞれ威嚇するように持ち上がる。
「力ずくでも帰ってきてもらうぞおおおぉぉッ!!」
ドリルが甲高い音とともに回転する。低いエンジン音が響き出す。
『G・コザッキー』が攻撃態勢を示した。
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