過去ログ - 闇霊使いダルク「恋人か……」 U
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6:【4/6】[sage saga]
2011/12/13(火) 16:14:37.45 ID:6WSLdOzoo
「いきなり小話と言われてもな……」
ダルクが腕を組んだ直後だった。
『!』
泉の精霊があさっての方向に顔を向けたかと思うと、同時に全身の輪郭を大きくぼやかせた。
まるで綺麗に張っていた水面が、突然何者かにかき乱されたかのように。
「どうしたんだ」
ダルクも一瞬で異変を悟り、声をひそめて泉の精霊の視線をたどった。
ダルクは夜目が利くが、視線の先は岸辺に近い水面。さすがに水中の様子までは分からない。
『どうやらあの子を起こしてしまったようです。急いで水を汲んだほうが良いでしょう』
「あの子?」
『はい、この泉に住まうモンスターです。根はいい子なのですが……』
息つくまもなく、使い魔のコウモリ・ディーが慌ただしくしく舞い降りてきた。
ダルクの耳元で警告の羽ばたきを打ち鳴らす。
敵性モンスターを感知したときの反応だ。
ダルクは手早く水がめを引き上げ、蓋をはめ込んだ。
泉の精霊とディーの反応で、何となく相手の察しがつく。
「泉の精霊、ありがとう。小話はまたの機会に――」
静寂を破り捨てる荒々しい水音!
高く打ち上げられる水柱と、ほとばしる飛沫。
「うわっ!」
予期せぬ登場に驚倒しながらも、ダルクはすばやく体勢を整え杖を構えた。
そのモンスターは水面から飛び上がった跳躍をもって、そのままダルク達の目の前に着地した。
コケが張りついた浅い緑の身体に、葉脈のように水が滴り落ちていく。
「やはりお前か」
月に照らされ、ヤツの姿が明らかになる。
肩から腕にかけて生えている小さなトゲトゲ、両ヒザから突き出た大きな一本トゲ。
つま先、手先の爪は鋭く、むき出されたキバは見るものを威嚇する。
敵意をむき出しにした赤一色の爬虫類の目――。
『ギコ!』
泉の精霊の響き声と共に、エリアの使い魔は荒々しいわめき声を上げた。
ギゴバイトと呼ばれる、二足歩行の肉食恐竜のようなモンスターである。
ただしサイズは小柄で、単体であればさして脅威にはならない。
だがその身体に有している武器はあなどれず、本気で襲いかかられたらただのケガでは済まないだろう。
「う……寝起きが悪いようだな……」
そして今まさに、ギコは本気でダルクに襲いかかろうとしていた。
低いうなり声を上げつつじりじりと位置取り、自然にダルクの退路を塞いでいく。
ダルクの後ろには湖が広がっている。背水だ。
言うまでもなく、相手が得意とする水中に逃げ込むわけにもいかない。
『ギコ、おやめなさい。この方は水を汲みに来ただけです』
ダルクを挟んで泉の精霊が呼びかけるも、ギゴバイトの興奮は収まらない。
親のカタキと言わんばかりダルクを睨みつけ、一触即発の様子で殺気立っている。
いや、あるいは親のカタキかもしれない。
ダルクにはギゴバイトの気持ちが分からないでもなかった。
ギゴバイトにしてみれば、親代わりのエリアの裸体を覗き、初対面で自分を無理やり眠らせ、
あげくにエリアがショックを受けるようなことをやらかして逃げた男、それがダルクなのだ。
その姿を確かめたなら例え夜中であろうと、眠気を忘れて怒り心頭に発するというもの。
『ギコ。この方を傷つけても、エリアは喜びませんよ』
泉の精霊の制止ももはや耳に入らないようで、ひたすらダルクに憎悪を集中させている。
こうなってはもう穏便に収まりそうにない。
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