15:JK[saga]
2011/12/15(木) 19:26:17.37 ID:fJUeZbYv0
言った昴は屋上の柵に寄り掛かるようにして、月を見上げた。
月は蒼白く灯っている。
不意に昴は思った。
己は蒼白く光る月に叫ぶ哀れな犬なのだと。
昴は己に存在理由が無い事を分かっている。
否、人間自体、存在していてはいけないのだと確信している。
周囲の享楽的な生命体とは違う。
真に世界の未来を案じているのは、自分なのだ。
不要な存在はこの世界から消失しなければならない。
故にどうも昴は死なねばならない。
昴が初めて手首を切ったのは、十三歳の頃だった。
虐めや虚無感などと言った斯様な下らない動機ではない。
人間が地球上に存在している事を、
人間である自分が地球上に存在している事を、只管に哀しんだからなのだ。
存在価値の無い生命体は淘汰されねばならない。
それが分かっていたからだ。
以来、五年の間に三十回以上手首を切った。
己の血液と共に、人類の汚濁が流されればいいと思っていた。
消えてしまえ。
自分の中にある汚れ切った人類の血など消えてしまえばいい。
斯様な自分故に月夜叉と邂逅出来たのだと、昴は信じている。
人間の罪悪を理解している自分だからこそ、月夜叉という存在を視認出来たのだと。
それだけで自分が犠牲になった甲斐があると感じられる。
『昴。逆に問うてもいいだろうか』
月夜叉は悠然とその場に存在し、超然と昴に訊ねていた。
微苦笑して髪を掻き上げ、昴は応じる。
「どうしたのよ?」
『昴は何故ゆえに存在している。
何の為に存在しているのか』
「私? 私はね……、死ぬために存在している。
死こそが浄化なんだ。世界の浄化なんだ。
死を司る君なら分かるだろう?
君はもっと世界に死を齎すべきなんだ。
誰も彼も奴もあいつもどいつも死に至らせて然るべきだ。
勿論、私を死に至らせてからで構わない事だけどね。
そのために私は生きている」
『死ぬためにか』
「そう。死は罪悪を浄化してくれる。
だから、私は人間を死で浄化させたいんだよ」
40Res/54.44 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。